ペプシマンシリーズの誘惑の終焉  (2000/06/16)
 

六月某日 埼玉県玉川村某所にて
ついにペプシマンが女性にひっぱたかれているおまけをゲットした。えっへっへっである。
いつものようにコンビニで店員の目を盗みながらペプシコーナーへ行ってみた。 別に万引きするわけではないので堂々と買えばいいのだが、おまけ目当ての恥ずかしさがいまだに 隠し切れず、つい店員の視線を気にしてしまっていた。アルバイトの女性がレジうちに 熱中している間に籠に一本入れてみた。おまけの袋を軽く押しながら中のおまけを想像してみた。 今までにない感触だ。これは期待できる。必要のないスナック菓子と一緒にレジに 並んで、店員と目を合わさないように、あえて新聞の見出しなどを見つめる振りしてレジを通過した。 コンビニを出ていつもの調子で車に乗り込んだ。ドキドキしながら袋を開けると、 やはりそのものズバリだった。はるばるこの村まできてよかった。

六月某日 長野県上田市某所
この日は仕事の関係で車で長野県内各地を回っていた。車で移動していると休憩がてら コンビニによることが多い。いつものように何食わぬ顔でペプシコーナーへ。ここでも例の ブツは、かなりのスペースを割いている。しかし毎回コンビニに入るたびにペプシばかり 買えない。ここはひとつ眠気覚ましのガムでも買おう。さすがにトイレを借りて何も買わずに 店を出るのも気が引ける。トイレ借りたらガムひとつ。礼節である。棚から新製品の ガムをひとつ取り出してレジに向かうと、地元のおばさんが店員のお友達と談笑していた。
レジに並びつつも彼女らの会話も盛り上がっている。店員は私の存在に気がついたが、お客の ご婦人はまったく気にしていない様子だ。別に急ぐ必要もなかったので気長に待って みることにした。長野の方言もいいもんだ。んだすな(これは秋田弁)。たまにはのんびり列を 待つのも悪くないだろう。
すると、
おおおおっおおおお。
ペプシマンが。レジの横のペプシコーナーに。
ペプシマンが剥き出しだ。ここのペプシはおまけが剥き出しだ。ご丁寧に袋から取り出して、 ボトルに乗っかっている。しかもまだ見ぬ犬に噛まれたペプシマンがある。欲しい。

ペプシマンのおまけが各種類ボトルにくっついて売られてる。

憧れのペプシマンが手に入る。そのボトルを手に取れば自動的に犬に噛まれたバージョンが 自分のコレクションに加わる。いとも簡単に手に入る。手に入る。手に。。。。

いや違う。違う。違うんだ。
それは「宴のあと」とでも表現しようか。
剥き出しのペプシマンは心の中の何かを終わらせた。おやや、終わってしまった。
たとえばお盆過ぎにオンエアされる某局の24時間テレビを見ているような、季節の終わり。
もうあの暑い夏は来ない。来るのは残暑だけだ。海で泳ぐことはもうない。海はクラゲたちに 譲ろう。海辺の賑やかさも、山のすがすがしさも、もう終わり。今では夏休みの宿題だけが 残っている。早朝のラジオ体操で参加するたびにもらったハンコももういっぱいになっている。 盆踊りもとうに終わってしまった。あとはいやいやながらに宿題して二学期を 待つばかりだ。油蝉もミンミンゼミも死んでしまった。ヒグラシの悲しい鳴き声が仕舞い忘れた 簾越しの西日に映えて・・・
過ぎ去った夏は来年までやってこない。なんて寂しいんだ。
前回のコラムであれほどいったじゃないか。手に入らないものを集めるのが楽しかったのに、 お好きなおまけをどうぞ、ではいままでの苦労が水の泡だ。
手に入りづらいから夢中になったのに。
ひとつのブームが逃げるように去っていった。確実に去っていった。足早に消えようとする ペプシマンシリーズの誘惑を追いかけることはできなかった。ペプシマンには後ろ髪が生えていない。 たとえあっても、誰が彼の後ろ髪をつかむんだ。
興がさめた。オマケ剥き出しだけは見てはいけなかった。
なにも語りかけようとはしないペプシのおまけたち。
さようなら。
たとえ他のお店で君らは袋に入ったままであっても、もう会うことはないだろう。
結局集まったのは15種類のうち11種類のみ。それは三人官女のいない雛人形の様。
グッバイフォーエバー
レジの順番がやってきた。ガム代105円を払って、ペプシマンに背中を向けた。コンビニを 出ると、静かに太陽が長野の山々に沈みかけていた。

もし君たちに会えるとしたら
もしもう一度ペプシマンに会うことがあるとしたら
それは
それは
第4弾だ。早く次のシリーズ始まらないかな。次のテーマは何かな。えへへ。
ちくしょ。次こそ全部集めてやるからな。

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