最新コラム  生命保険破綻論 続編 (2000/10/18)
 

 千代田生命が破綻した。と思ったら今度は協栄生命も破綻してしまった。びっくりである。こう立て続けに潰れるとは思っていなかった。生保破綻までのプロセスは前回のコラムと重複するので、今回は気にかかることをひとつ。

 私が保険会社に勤めていた頃、生命保険各社の顧客層には特色があり、何となく棲み分けられていた。各社とも得意分野というか決まったお客を持っていた。日産生命はその名が示すとおり日産・日立グループを最大の顧客としていたし、健全生保の代表格の大同生命は税理士にめっぽう強い。各社は基本的には旧財閥系の流れを汲んで営業展開していた。

 今回の協栄生命は公務員市場に強い。教職員や自衛隊などである。私の心配はここにある。破綻した生保の受け皿には外資系企業が名を連ねている。協栄生命には早速アメリカの大手生保、プルデンシャル生命が支援の名乗りをあげているという。生命保険契約は個人情報が満載である。保険契約は、個人の生命に関わる重要な情報を基に締結されているからだ。生年月日、住所、職業、病歴、相続人など個人にとっては人に知られたくない情報ばかりである。

 協栄生命の保険契約者、被保険者には自衛隊員が多い。彼らは日本国の戦力そのものである。彼らの情報は国家機密にも絡んでいるだろう。保険契約はあくまでも商行為であり、個々の契約内容には国家は関与しないのは当然であるが、その主たる情報はアメリカの企業にしらみつぶしに知られるのである。情報の漏洩は論外であり、皆無であることは知っている。しかし万が一流失した場合は、わが国の戦力情報が他国に漏れることになる。一大事に発展しかねない。

 このままでは日本の生命保険の経営は外資系に任せきりになる。個人情報を外国の企業に握られることは驚異ではなかろうか。日本の経済状況を考えれば、国内に救済企業は存在しないので外資の資金と信用力に頼るのは致し方ない。しかし、経済の混乱を回避する代償として国民の個人情報を他国に握られるのである。

 こんな考えは古いと思う。インターネットの発展により国境という概念は、なくなりつつある。しかし、今日でさえ戦争状態にある地域は存在している。日本では戦争は金輪際起こらないのだろうか。私が恐れていることは、日本国民の情報はすでに外部に筒抜けであるということだ。情報を制する者は市場を征す。当座の資金繰りに追われ、この国の重要な情報が持ち出されていると思うことは考えすぎだろうか。
 協栄生命破綻のニュースを見て、ふとこんなことを考えてしまった。杞憂に終わってくれればいいのだが・・・。


以上

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