プロジェクト X (2000/11/29)
 

 今回はテレビ番組について
 NHK毎週火曜日午後9時15分からのプロジェクトXという番組に目が離せない。大の男が場所もはばからず流す涙に、思わず貰い泣きだ。苦労した時代を成功した立場から振り返るとき、そこには涙がある。いい涙である。例えば日本で最初にコンビニを作った男たちの苦労話とその後の大成功。例えばロータリーエンジンでルマンを征した男が、そのエグゾーストノートに目を潤ませる瞬間。みな良い顔をしている。
 先日の内容は、ある高校の教師の物語だった。昔「スクールウォーズ」という民放のドラマがあった。イソップの話といえば多くの人に通じるだろう。10数年前、金八先生シリーズとは別個の存在として大ヒットした。山下真司扮する元ラガーマン教師が京都一荒れた学校をラグビーで日本一に導くまでの話であった。
 で、今回はそのドラマのもとになった実話を45分にまとめたドキュメントである。ドラマも良かったが、実話はもっとよかった。愛とは人を信じ、人を待ち、人を許してやることだというクサイ名言も思い出され、ALL for ONE,ONE for ALLというラグビーの精神の尊さに改めて感動した次第だ。ツッパリがツッパリをやめる理由は、泣き虫先生の涙の奥に漲るその思いが伝わったからだろう。そこまで人を信じることができれば、その人はきっと答えてくれる。人が描いた筋書きではなく、こだわりを持って立ち向かった男たちの筋書きのないドラマが、お茶の間の私のところまで涙を誘う。
 坦々と事実を伝えるナレーションと、中島みゆきの心震わす歌声に、今宵も酒がうまい。男が人前で涙を見せるのには訳がある。その訳をこの番組が伝えてくれる。本当は自分自身もそんな涙を、自分自身の涙を流したいことを、本当は自分が一番知っている。無茶苦茶うらやましく、そしてゴツ格好ええ。そのために何をすべきか自問の日々も続く。
 テレビがつまらなくなって久しい。愛だ恋だのの薄っぺらな恋愛ドラマや、笑えないバラエティが増えるなか、こんなに時間と構想をかけた番組は貴重である。
 次回はどんな男たちのどんな涙に共感できるか、ひさしぶりに一週間が待ち遠しくなるテレビ番組である。まだ見ていない人のために、NHKとは視聴者としてしか関係がない身ではあるけれど、ここにちょっと紹介してみたくなった。


以上

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