ユニクロのない場所 (2001/11/24)
 
 今日は久しぶりに銀座で昔の友と再会した。営業の第一線で活躍している彼の横顔は自信に満ち溢れつつも、明日どうなるか分からない不安げな表情を垣間見せていた。彼に会うのは一年ぶりだろうか。彼とは日本中場所を選ばず、よく飲んだものだ。青森・秋田・東京・茅ヶ崎南・滋賀・京都・三田・出石・明石・博多・熊本と思えばあっちこっちでよく飲んだものだ。で、そんな彼と男同士でなんだったが、銀座のカレー専門店で昼ご飯を共にした。東京出張の最後に、久しぶりに飯でも食おうと誘われたからである。失われた10年を共有する昔からの友は、気がねなく、そして気さくである。
 再会の場所は銀座。そこは、いわゆるカレー屋さんとは趣を変えていて、地下一階のそこは素敵な空間だった。カレー屋というよりインド料理専門店といった方が、イメージがつきやすい。日本的なカレーではなく、本場のインドカレーを存分に味わえる店である。大学時代パキスタン出身の某氏に作ってもらったあのカレーと同じ味わい。タンドリーチキンも本格派で、骨まで食べられるほど柔らかく煮込まれたカレーをバター風味のナンで食すわけだが、小洒落た店内の雰囲気にもマッチして、素敵なお店であった。

 この店で味よりも印象的だったことがある。客層である。銀座の土地柄もあってか清楚な女性が多く、どこぞのグラビアで見かけたこともあるような女性もセクシーな装いで楽しそうに食事をしている。貧乏人がいない。おばかっちょもいない。カオナシもいない。そして、ユニクロのユの字をまったく感じさせない。ハイソな育ちのいい女性たちで溢れる店内に男二人は異様だったかもしれないが、俗世とは一線を隠した場所で、本格的なカレーを食べるのも非日常的でまことによろしい。

 ユニクロがないのは、なんて心地よいのだ。高そうな靴と清楚な衣服と素敵な微笑み。たまの休みに銀座で食事をする楽しみを知っている人たちと時空を共有するのは悪くない。何よりお客みんなが幸せそうである。幸せな食卓はいい。普段の食事には手を抜きまくっても、銀座というこの街の位置を知る者のゆとりだろうか。
 ユニクロのすばらしさは大いに利用させてもらいつつ、それしか持っていないのは悲劇である。衣服の一つのブランドとして着こなすのはいいが、高品質・低価格に押されてそれ一色では、満たされない瞬間がある。ユニクロを見たくない空間がある。例えば、その場所は銀座だったりする。ふと日常生活に疲れたら、銀座にいこう。280円の牛丼が250円になる日を心待ちにするよりは、2000円のランチで心を満たし、清楚な女性たちのオーラを感じつつ、素敵な女性と心の豊かさを共有したいものである。

 ビールも効いて、トイレに行くと鏡に写った自分の姿があった。自分だけがユニクロを着ていることに気がついた。ちょっと恥ずかしかった。


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