MoMAの魅力 (2002/01/09)

 
 先日東京・上野の森美術館で開催中のMoMA(The Museum of Modern Art)にて名画を鑑賞してきた。このMoMAはニューヨークにあり、いつかは訪れてみたいと思っていたが、東京での出会いに感謝しているところである。シャガールの「誕生日」、マティスの「ダンス」、ルソーの「夢」、ダリの「記憶の固執」、モンドリアンの「トラファルガー広場」などの名画の数々がコンパクトな会場にきれいに展示されていた。やはり名画はいい。1枚の絵がなぜ名画と呼ばれるのか。その理由はいとも簡単である。絵画自体が強烈なメッセージを発し、会場にオーラをもたらしているからである。
 会場内で目を引く名画があった。ピカソの「Girl with a Mandolin マンドリンを持つ少女」である。茶色を基調とした作品で、中央に厳しい表情の少女がマンドリンを弾いている様子をキュビズム的に表現している。全体的に角張った印象を受ける中で、丸みを帯びた部分がある。少女の右腕(二の腕)と首筋、そして右側の乳房である。スレンダーな少女がピカソにせがまれて、真剣な眼差しで十八番を演奏しているにもかかわらず、ピカソは胸のふくらみだけを見ていて、演奏はそっちのけという印象を、私は受けた。大きくなった胸をただひたすら見つめ、それを愛撫するかのごとくあこがれている様子がなんとも愛くるしい。ピカソはこの少女の成長を喜び、そして愛しているのだ。それが右の柔らかそうな胸に現われている。私はこんなにも柔らかそうな乳房を見たことはない。ピカソの視線が釘付になるほどのやさしい胸。近くから見ても、遠くから人の後姿越しに眺めても、その「愛」が伝わるから不思議である。おそらく演奏が終了し、楽曲の感想を聞かれても、ピカソは答えに困っただろう。胸ばかり見ていて、全く聴いていなかったのだから・・・。
 私がこの絵に酔いしれていると、随行させていただいた某女史からまったく別の解釈を聞いた。彼女の感想は割愛するが、鑑賞者によって絵への思いも変わるところも一興である。釘付になったもう1枚の絵「ルソーの夢」についても触れてみたいが、それはまた別の機会にしてみたい。


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