「邪馬台国はどこですか?」を読んでいる (2002/02/09)

 
 「邪馬台国はどこですか?」鯨統一郎著 創元推理文庫を今ごろになって読み返し、その驚くべき論証に心打たれてしまったので、少し紹介してみたい。この本は数年前に「このミステリーがおもしろい」等々の雑誌に紹介されて話題をさらっいた。当時この本を群馬県出身の某氏より譲受け、面白いな程度で終わっていた作品であったが、書庫を整理していて再び目に触れたので、改めて読むことにした。
 んん。おもしろい。表題の「邪馬台国はどこですか?」をはじめ聖徳太子、信長、勝海舟、仏陀など今までの歴史上の常識を覆す勢いの作品群である。文章の内容に触れることは、これから読む人にとってタブーであるので、興味のある人はこのページは見ないでほしい。

 果たして邪馬台国はどこにあったのか。現存する資料を紐解けば、九州説も畿内説も吹き飛んでしまい、その場所は・・・やっぱり言えない。とにかく読後の私はその場所を掘ってみたくてしょうがない気持ちで一杯だ。工場誘致や団地の建設など、都市計画に絡まないと歴史の発見はありえない。NHKのプロジェクトXでも紹介されたように、吉野ケ里遺跡も工場誘致のための調査から一発逆転で、保存指定が決まったほどだから、あのはるかなる場所もなにか別の思惑がなければ開発されないだろう。温泉もいたるところにあるあの場所に、きっと邪馬台国の礎が眠っているのだから、ここはなんとか首都機能移転くらいの大プロジェクトの名のもとに土を掘り返してもらいたくなる。卑弥呼饅頭つくって一儲けしたいではないか。いまからあの土地の一部を買っておけば、遺跡ブーム到来の折は一儲けも二儲けも夢ではないぞ。まずは立ち退き拒否からお手並み拝見といきたいところだ。話が相当みっちくなったが、とにかく邪馬台国が「かの地」にあることが実証されれば、教科書はもとよりこの国の歴史そのものを揺るがしかねないことになる。そんな壮大なロマンを歴史書にも基づき、漢字一つ一つの意味を着実に解釈すれば、「かの地」にあったとしか思えなくなるから不思議である。このミステリー小説は、某文芸賞の最終選考で落選したものの、宮部みゆき氏によって特記されたことで一躍、陽の目を見ることになった。発表から数年の歳月が経つものの、いまだかの地に開発の手が伸びないことはなんとも不思議な現象である。あの場所をみんなで掘り返せば、雇用も創設され、日本経済の起爆剤になるはずなのに・・・至極残念だ。

 また作中の「謀叛の動機はなんですか?」では織田信長を取り上げている。NHK大河ドラマ「利家とまつ」でも反町が演じているので、今なら親しみも沸いてくる。「本能寺の変」は誰によって仕掛けられたのか。鯨氏の緻密な論証によって明らかにされていく様は痛快である。今日、英雄視されている信長がヒトラーに殉ずる大量虐殺の首謀者であったことなと゛、新鮮な驚きを隠せないでいる。先日の「利家とまつ」での桶狭間の戦いのシーンは、この鯨氏の論証が根拠となっているような歴史考証があり、自殺行為にも似た戦法こそ鯨氏の思う壺である。信長という英雄の、極悪非道な一面こそ歴史的真実である。信長を見る目も違ってくるから不思議である。

 文中にたびたび登場する水割りやホットウイスキー、カシスシャーベットやアタリメなどを実際にしゃぶりながら、ふとこの国の歴史を思い描くのも悪くない。そんな名著をぜひお試しあれである。この本が廃盤になっていないことを望む。


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