産婦人科の誘惑 (2002/02/08) |
先日、某友人が元気な女の子を出産した。母子共に健康で、旦那と祝う酒を何にしようか、大いに悩んでいるところである。たまたま某友人が入院している個人病院のそばに行く用事があったので、数名でお見舞い(?)がてら訪問した。産婦人科というところは男一人では行きにくい。嫁さんや妹などが入院しているのであれば、何てことないが、友達の嫁さんともなると話は微妙である。旦那のいない間に密会するようでもあるし、母乳など与えていたら目のやり場がうれしくなってしまう。そしてもし自分に似ていたら、今後ややこしくもなりそうである。いや今回に限れば、そんな心配はまったくないが・・・。いやいや、今回に限らずそんなことはありえない・・・汗。とにかく男一人で行っても廊下ですれ違うであろう他の妊婦さんになんと挨拶していいかわからないし、あの乳っぽいアロマが漂う空間は男一人では何しに来たのか問いただされそうである。産婦人科フェチ? 近頃は危ない人が多いので、そういう目で見られるのも心外だ。
そういえば、私も産婦人科病棟に入院していたことがある。大学病院のそこは、私の病棟の隣の部屋だったのだ。大学病院ならばいろいろな患者がいるので、たまたま通りかかったと言い訳できるし、入院患者としては病室が産婦人科の隣だっただけのことである。何も臆することはない。しかし、産婦人科専門病院では、たまたま通りかかるには理由がなかったりする。で、いろいろ考えながらも、複数で行くならまったく問題はないので、この機会を逃すまいと興味深々、某グループの後ろについていったのだった。 病棟は10名ほど入院しているようで、一日に3、4人ほど生まれている。出生率低下が叫ばれる中、なかなか繁盛している病院である。この病院は某地区では、屈指の名医ということで名が通っている。大学病院や市民病院などもあるのに、なぜこの3階建ての小さな病院が名医なのだか興味があった。医師としての技術が名声を築いているのか、何か他の要因があるのだろうか。入院中の某母によれば、口コミで広まった評判という。最近は一人っ子や二人兄弟が多い中で、この口コミは相当抜きん出た何かがなければ、えられないものだろう。確かに廊下や待合室はおしゃれに装飾されていて、これからママになる女性たちの評判もよさそうなセンスである。色合いもピンクを基調としているし、看護婦さんたちの文字も丸文字系である。しかし、この装飾ならばほかにもありそうだ。なぜこの病院の評判がいいのか。なぞである。時折聞こえる赤ちゃんの鳴き声が、生の活力を与えつつもつくづく不可思議である。 病室は二人部屋になっていて、カーテンでしきられたもう一人の住人も元気な赤ちゃんを生んだばかりらしい。某友人の元気な赤ちゃんに対面した。旦那にそっくりで一安心だ。明日血液検診もあるらしく、赤ちゃんがO型でなければ騒動も起こらないようである。すやすや眠る赤ちゃんは時折あくびなどして、にぎやかな下界に戸惑っているようでもある。左足にマジックで書かれた苗字が、なんともほほえましかったりする。まあ、これだけ旦那に似ていれば、取り違えられることもないだろう。子供というのもいいものだ。安堵感溢れる友人の笑顔が素敵であった。もうじき夕食の時間だという。そろそろ失礼しようか。病室の外へ出たとき、入れ違いに今夜の夕食が看護婦さんによって運ばれてきた。トンカツ定食風である。お盆にはデザートやら、なにやら色とりどりのお皿が所狭しと並べられている。いい香りがここまでしている。あっ。これだ。この病院の名声は、ここにあった。 食事がうまい、らしいのである。病院の食事といえば、まずいというイメージがある中で、ここの食事は見るからにうまそうで、某友人によれば、かなりおいしいらしい。彼女もキノシタ、藤よし、ラナプール、国よしで旦那と共にご一緒させていただく食通にして、某ミ○ニの不満も共有する仲である。その彼女が病院の食事に大絶賛を贈っている。相当うまいに違いない。食べてはいないが、色遣いといい、香りといい、暖かそうな温度といい、料理として申し分ない。隙あらば一口頂きたかったが、そんな下司な考えは不謹慎だろうから、じっと我慢した。自分のときまで我慢しよう。調理台の棚に並べられ、出番を待つ「鯛の御頭」も子供の誕生を共にお祝いする気遣いに溢れている。ブラボーである。 「飯がうまい。」 病院経営の何たるかを思い知る。お産の経験が少ない中で、病院の技術的な評価は妊婦には難しいだろう。設備の清潔さや適切な措置など考慮される点は多いだろうが、なにより食事のポイントは大きい。毎日三食、年に1000回以上も食べている食事の比較は、誰にでもできる。病院にご飯だけを食べに来たいといわせる料理こそ、人を惹きつけ、口コミの原動力になっているのだ。これはすごい発見だ。これだ。これぞ病院経営の本質だ。妊婦や患者はお客様なのだという個人経営病院の経営理念が垣間見られる。大病院に立ち向かうには、この方法があったのか。感服である。 今度、病院経営をするときの参考にしたいものである。 それにしても、うまそうなトンカツ定食だったな・・・。ああ。食べたいがな。 おしまい Copyright (C) 2002 Yuji Nishikata All Rights Reserved.
|