私の願い 成田上空編 (2002/08/14) |
ところで、成田空港の超過密フライトは疲れた身体にはかなりこたえる。空路疲れ切っている身体に、滑走路が込んでいるため上空を一周してから再度着陸体制に入ります、のようなアナウンスを聞くたびに思うことがある。脂ぎった額をふぐいつつ、こんなことを思う。 「お客さまにお知らせいたします。当機はまもなく成田、新東京国際空港に着陸いたします。どなたさまもお座席のベルトをお締めください。化粧室のご使用はお控えください。」日本人フライトアテンダントの説明を聞きながら、真下に見える海を眺めていると、再度アナウンスが流れる。「ただいま成田管制塔から入りました情報をお知らせいたします。当機着陸予定の成田空港は、滑走路が大変込み合っており、成田への着陸が難しい状況になりました。全くやむを得ない処置ですが、当機は日本政府及び在日米軍の了解のもと、米軍厚木基地に緊急着陸いたします。」機内からどよめきにも似た声が各所から上がる。「ご安心くださいませ。米軍厚木基地からの交通手段についてご案内いたします。神奈川県内にお住まいの方は、基地内に誘導いたしますタクシーにてご自宅までお送りいたします。その他の都道府県にお住まいの方は、東京駅または羽田空港および成田空港までのリムジンバスをご用意いたしております。お荷物は厚木基地到着後、基地内でお渡しすることになりますが、乗り継ぎのお客さまは最寄の客室乗務員までお申し出ください。今回の緊急着陸に付きましては、機長に代わりまして深くお詫び申し上げます。」 成田空港は我が家から異常に遠い。それにくらべ厚木基地はかなり近い。厚木に降りろ、である。東京の横田基地となると距離的には成田より近いが、神奈川県は南北の移動が極端に貧弱で、しかも国道16号線の渋滞ぶりは涙もちょちょぎれるほどなため、はっきりと遠慮しなければならない。厚木に降りてくれれば、なんて楽だろう。日米の友好も深められるというものだ。着陸待ちの為日本上空をぐるりと廻る飛行機に乗り合わせるたびに、厚木で降りてくれと願うのも神奈川県民なら致し方ないことだ。百歩譲って羽田に降りよう。羽田からベイブリッジ経由で横浜駅まで行こうものなら御の字である。 これはヨーロッパから香港経由で日本に帰る場合も同じだ。特に用事のない香港に寄らずに直接成田へ向って欲しい。地図上ではほんの少し舵を左に切るだけで、東京に向えるのに。乗り継ぎ時間も合わせ確実に5時間は短縮できる。香港で降りずに、やむを得ず成田に向ったりしてくれないかな。はじめから直行便に乗ればいいのだが、乗り継ぎ便との価格差を考えると、悲しい性に包まれる。やむを得ず東京に向いますの一言が何故言えないのか。人は、見当違いの憤りを感じたりしないのだろうか。恐らく、しないだろう。当たり前だ。長時間のフライトで心身ともに疲れきり、冷静な判断ができない自分に気付いたりする。なに考えてんだろ。ふう。 富士山を横目に見つつ、どうしても成田に降りてしまう飛行機。いつか私の願いがかなうことを祈りながら、成田エキスプレスにするか、横浜駅行きのリムジンバスにするか、到着ロビーで迷ったりする。それが帰国後第一番目の選択だから悲しいよ。そして静岡や神戸に空港を作ろうという動きにも、いささかの同情の念を抱くのだった。静岡も成田から遠い。ここはひとつ静岡県民と手を組んで、厚木に降りろ運動を展開したいものである。(厚木から静岡も遠そうだけれど・・・)。 このコラムにオチは探さないでください。飛行機が落ちたら怖いから。書けば書くほど落ちがない。ホントすんません。 おしまい Copyright (C) 2002 Yuji Nishikata All Rights Reserved.
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