らも (2003/02/14)

 
 周知の通り、中島らもの「今夜、すべてのバーで」(講談社文庫)は、五木寛之の「雨の日には車をみがいて」(角川文庫)とともに、にしかたが選ぶ世界二大小説である。その中島らもが先週、大麻所持で現行犯逮捕されたのは、ショックというより、ああそうですか程度の事件だった。昨今の暗いご時世で、いろいろあるが、らも容疑者の書店に与えた影響はどうなのだろうと思い、近所の比較的大きな本屋に寄ってみた。

 あった。文庫コーナーには数冊の中島らもが堂々と販売されていた。

 普通、歌手や誰かが逮捕されると、CD売り場からそのアーティストの作品は撤去されたりするが、さすがらも容疑者である。堂々と書店の一角を占めている。すごい。これは、らも容疑者の作品のテーマが、訳ありネタが多いためだろうか。出る杭は打たれるというが、出すぎた杭は打たれないの典型的な例として採用されたのだろうか。

 それとも逮捕だけでは撤去の対象とならず、容疑が固まり、判決が確定した時点で、作品の撤去が始まるのだろうか。その辺の事情は分からない。ただ単に、その書店での撤去が忘れられているためだろうか。今後消費税がアップされることが予想できるので、文庫の価格表示を訂正せざるを得なくなる状況に備えて、在庫を今のうちに売ってしまおうということなのだろうか。

 事情はよく分からないが、とりあえず某書店では今現在、らも作品は購入できる。最悪の事態を想定して、絶版が決定する前に、名作「今夜、すべてのバーで」を購入することをお勧めしたい。世界の名著が絶版になる可能性がある。これは日本文学にとって大きな痛手となると思っているのは、私だけではあるまい。急げ。

 私だけかな。私だけかも。


おしまい

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