鏡の中の私 (2003/05/13)

 
 最近、鏡を見つめる機会が多くなっている。別に「我ながらいい男だなぁ」とか、「惚れ惚れするなぁ」とか、「日本男児だなぁ」などと思っているわけではなく、ましてや吹き出物の跡や髭剃りの擦り傷や剃り残しを見ているわけでもない。

 鼻の穴を見ているのである。鼻を膨らませたり、すぼめたり、ひん曲げたり、いろいろしていると結構面白い。嗅覚をつかさどる器官にして、眼鏡を留める機能を持つ鼻。ワインの官能的な香りをここが感知するのかと思うと、興味も尽きなかったりする。鼻の内側の皮膚も伸ばしたり縮めたりすることで、いろいろと表面的な変化があって人体の不思議な構造に感動すら覚えるものだ。鼻の穴マイブーム症候群なのである。しかし、最近は少し事情が違ってきた。

 なんと鼻毛の一本が、白髪になっているではないか。おおお。こいつは珍しいと思うより数倍のパワーでショックが走る。う。ついに年老いてきたか。もう若くないんだなあ。などと妙に感慨も深くなりつつ、やっぱりショックだったりもする。この一本は右側の穴の方にあるのだが、こいつは抜いていいものなのか、そのままにして鼻毛本来の機能を保たさせた方がいいのか気にかかっている。普通に生活している分には、白い鼻毛は外から確認できないので、そのまま放置していてもよさそうだが、日常生活において鼻の穴が気になってしょうがない事態はいかがなものだろう。おかげさまというかなんと言うか、髪の毛には白髪はあまりなく、たまに見つけると鏡越しに抜いたりしているが、鼻毛の場合は前例がなく、対応にも困るというものだ。

 一本の鼻毛が生活のリズムを乱している。

 抜いちゃいたい。されどこのままシンボリックに留めておきたい。悩ましげな日々がしばらく続きそうである。


おしまい(くだらなくってすんません)
 


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