「アメリカ人はバカなのか」 (2003/06/01)

 
 幻冬舎文庫から発売されている「アメリカ人はバカなのか」小林至 が面白い。著者は、かつて東大卒業後ドラフト8位で千葉ロッテマリーンズに入団したことで知られるが、今は江戸川大学の助教授を務めている。

 この本の趣旨をいつものコラム的に紹介するならば、「けちょんけちょんにアメリカ批判を展開している」である。アメリカの理想と現実のギャップを、自身の経験とそれを裏付ける豊富な資料を基に展開する様は、痛快であり、極端すぎる理論展開は抵抗感を感じさせるところも少なくないが、それでも妙に納得させられるから凄かったりする。内容は、このタイトル自体が一番物語っていて、アメリカの現実社会を浮き彫りにしている。選挙制度、税制、司法制度(弁護士や陪審員)、人種差別、医療福祉、教育制度など教科書的な説明からは決して読み取ることの出来ない裏情報が満載なのである。ひとつの制度を弱者側から見るのと金持ちサイドから見るのとではこうも違うのかと、素直に驚かされつつ、貧乏渡米計画を持っている人にはどんな参考書やアドバイスよりも有効だろうと推測される。勝者に優しく、弱者をくじくアメリカという国の側面を見る気がして、久しぶりに脇目もふらずに読んでしまったりする。

 読み方を間違えれば、アメリカに対する欲求不満と偏見に満ち満ちているとも言えなくもなく、親米家からは相当の批判を受けると予想されるが、自身の経験に基づいた理屈には、かなりのインパクトを持って納得させられるから不思議である。そして筆者がまえがきで問いかけているように、この本を読んで本当にアメリカ人はバカなのか、自分なりに判断するのが大切なような気もする。

 個人的にはアメリカ人との交流もなく、アメリカへは短期の出張しか経験したことはなく、アメリカで生活するという感覚を持たないものとして、筆者の実体験は私にとって対岸の火事的な思いもするが、アメリカを知る上で、貴重な一冊であることには間違いはないだろう。アメリカが妙に一歩近くなった・・・。


おしまい


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