仁川国際空港 (2003/07/01)

 
 大韓航空を利用してパリに行くことが多くなった。大韓といえばかつて初めて海外旅行に行ったときに(ついでに一人旅だった)、利用した個人的に思い入れの深い航空会社だったりする。当時は、韓国の金浦空港まで行ってから一度アラスカのアンカレッジで燃料を給油してロンドンに行く旅だった。思えば、いつのころからかアンカレッジ経由という路線はなくなり、それは体力的にありがたく、そして知らぬ間に韓国の国際線の玄関口も仁川空港(incheon)に代わっていた。

 成田空港から仁川空港までは二時間弱の空の旅で、本当にお隣さんのイメージだ。新潟など日本各地からも成田を経由せずにいけるので、ますます便利だったりもする。今回は、そんな仁川空港の乗り継ぎ時間の過ごし方について提案してみたい。ここは最新の空港のようで、快適な設備が充実している。そして何より清潔感に満ち溢れている。免税店は40を数え、インターネットプラザ(有料)やゲームセンター、マッサージルームやシャワー室、そして子供用の遊び場も用意されていてかなり快適な空間だろう。成田のお株を奪うハブ空港としての機能を備え、ヨーロッパへ向かう、またはヨーロッパからの乗り継ぎの2,3時間はあっという間に過ごすことも出来たりするが、たびたび利用すると結構やることもなくなって、時間をもてあそんだりする。通貨はもちろんウォンだが、カードも使えるので飲食や免税品の購入も問題ないのだが、ここはお金を使わずに楽しい時間を過ごす方法を紹介したい。

 本屋にいくのである。乗り継ぎ用の3階のほぼ中央部にそれはある。もちろんハングルは読めないので、話題のヒラリー・クリントンの最新作の韓国語訳バージョンを手にとって眺めつつ、向かう先はレジの横、日本書籍のコーナーだ。9段の本棚に概ね35冊程度並んでいるので、全体で300冊程度の小さいコーナーだが、そのどれもが日本語で書かれているので、たいそう読みやすく、お気に入りの本などが見つかれば、結構楽しくもあろう。しかし、そこは異国の本屋さんである。何を立ち読みしようか背表紙を見ていると、ちょっとした違和感を覚えるのだ。日本語能力試験2級などの語学系の本に混ざって、「日経大予測94」とか91年の世界経済の動向云々の本が並んでいるのだ。94年といえば、そろそろ10年経つぞ。いつからここにおいてあるのか妙な不思議さが漂っているではないか。逆に日本の本屋さんではまず見つけられない貴重な本かもしれない。予測版を数年後の今の立場で読むのも悪くない。さらには村上春樹の「ダンスダンスダンス」上巻だけあったり、「北の国から全一冊」なる本や上杉鷹山の関連本がいくつかあり、「歴史を偽造する韓国」といった韓国にはマイナス的な本も妙に古ぼけた漢字で並べられている。不思議な本屋サンなのだ。

 空港内の免税店は日本人客も多く、店員さんも日本語で話しかけてくるが、この本屋サンに日本人はいなそうだ。ふらりと立ち寄りつつ、日本語の新聞を買う人はいるだろうが、ここ日本書籍コーナーにはほぼ誰も来ないから静かなのだ。綺麗な店構えの免税店は店員さんが異様とも思えるほど多く、買わないつもりの客には意外と落ち着かないのが痛いところ。そこへ行くと本屋さんは話しかけてくる店員もいないので、結構ゆっくりと読みふけることが出来る。立ち読みだけなら無料なのもうれしい。飛行機の時間までの小一時間、ゆっくりと日本語に浸るのも悪くないだろう。ただし、あいにくレジの横のコーナーなので、店員さんの視線を感じるまでの話だが・・・。

 異国の本屋さんで見つける日本の本。ちょっとした違和感と、ほかにどんな類の本があるのか興味は尽きないが、それはまた行ってのお楽しみにしておこう。

  韓国 仁川国際空港


おしまい


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