フランスを巡る冒険 バス編 (2003/07/01) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
フランスの地方に行こうシリーズの第一回目はバスの乗り方を紹介してみたい。
フランス旅行を計画して、ブルゴーニュ地方にどうしても行きたくなったら、パリのギャール・ド・リヨンGare de Lyon駅からTGVに乗れば1時間半ほどでディジョンDijonに着く。ここから在来線に乗り換えて一駅目のニュイ・サン・ジョルジュNuits St Georgesに行くもよし二駅目のボーヌBeauneに行くのもよし、三つ目のシャニーChagny(ミシュランの三ツ星レストランがあるし、少し強引だが特級モンラッシェの最寄り駅)に行くもよしだが、私はジュブレ・シャンベルタンの定宿に行くことになっているので、いつもバスに乗っている。 フランスの地方の交通手段は車が最も便利だが、バスも使い方次第では有効的だ。ただ日本の感覚のままでいると途方にくれることも多いので要注意だろう。そもそもフランスの人口は日本よりも少なく、しかもその多くはパリに集中しているので、地方のバスの本数は多くないことを踏まえておかなければならない。バスは少ない。これが大前提である。 ディジョンに着いたらまずは、駅に隣接するバスターミナルに行こう。インタネットカフェのまん前にバスの窓口があり、その後方にバス停が広がっている。ここでは時刻表をもらう。フランス語で「時刻表をくれ」とはどういう風に言うのだろうという心配はせずに、「タイムテーブルちょうだい」といえば、結構通じるものでお目当てのものをゲットできる。フランス語ちっくに「タイム・ターブル・シルブプレ」といっても通じそうだが、タイムは英語のような気がしないでもならなかったりもする。そして時刻表は路線ごとにいろいろあるので、ボーヌとかジュブレ・シャンベルタンなどのワイン産地を添えることをお勧めしたい。というよりも窓口で必ず聞かれるので次のように答えればいい。「Je voudrais aller à Gevrey-Chambertin maintenant」または単に「ア・ジュブレ・シャンベルタン」である。
さて時刻表を手にしたら、路線番号を確認しよう。ジュブレ・シャンベルタン村に行くのは二系統あり、44と60だ。44はボーヌをへて、ピュリニーモンラッシェ方面に行く路線で国道74号線を南下する高速タイプ。60はマルサネなどの住宅街をこねくり回りながらジュブレ・シャンベルタンまで行くタイプだ。ここでは44系統の時刻表を抜粋してみよう。
(時刻表はあくまでも参考程度に。きちりと現地で確認してください) これだけである。一日7本しかバスはないのである。逆向きも同じような感じである。これが現実である。しかも日曜日となると日に二本になり、また平日でもその日が休日に重なった場合は、後半の二本しか運行せず、5月1日の勤労感謝の日に至っては、バスは全休してしまう(電車は動いていた)。(詳細は現地で要確認。この表を使って現地で活動されてもブルゴーニュ魂では一切責任は取れません。) またボーヌから先に行く場合はもっと少なかったりする(特に夏休み時)。 ちなみに時刻表を眺めると、もっとたくさんのバスが走っているように見受けられるのだが、実は曜日ごとに微妙に時刻を変えている路線があり、途中から途中までの短い走行距離しかないバスも一括して掲載されているために見かけとのギャップが生じているようである。曜日の確認は、L..M.ME.J.V.S.Dで表示され、それぞれ曜日を意味するフランス語の頭文字をとったものである。日本語的には月火水木金土日と並んでいるようなものだろう。休日はFêtesでここの欄にNONとあると休日は運休を意味する。また学校が休みの期間中はもっと本数は少なくなるケースもあるようだ。この曜日の項目を必ず確認しないと、特に日曜日の場合はバス停で何時間も過ごす羽目になってしまうので気が抜けないのだった。ちなみに60系統はディジョンとジュブレ・シャンベルタン間でほぼ一時間に一本の割合であるから、かなり都会ジャン、である。(60系統のディジョンとジュブレ・シャンベルタン間は、所要時間約30分で1.64ユーロ=230円 2003年6月現在) 表に戻ってみよう。例えば、ジュブレ・シャンベルタンに宿泊して、午前中にニュイ・サン・ジョルジュに行こうとすると、7時と8時のバスしかなく、8時のバスに乗り遅れるとそれは遅刻を意味するのだ。但しジュブレ・シャンベルタンにはもうひとつの路線60系統があるので、いったんDijonに戻り電車で行こうと思えば、何とかなる可能性はある。しかし手前のヴォーヌ・ロマネに行く場合は絶望的だ。この村には電車もなく、ニュイ・サン・ジョルジュから歩いて一時間もかかるのだから。いずれにしてもジュブレ・シャンベルタンからニュイ・サン・ジョルジュまでは歩いて3時間半ほどかかるので(自分調べ)、8時のバスは結構大切なバスだったりするのだ。タクシーもないこともないが、タクシーは基本的に電話して呼ばないと絶対に乗ることは出来ない。電話番号が分からない場合は、ホテルのフロントか近くのBARでコーヒー頼みつつお願いすることになるが、BARは朝からやっているかどうか微妙で、私の定宿にはフロントなどないのだった。しかもタクシーは結構高い。少なくとも20ユーロ以上は覚悟すべしだろう。歩いていける僅かの距離に3000円もかかるなら、早起きしないと・・・、である。バスなら2.46ユーロ(= 345円)ですむのだ(ん。意外に安くないなあ)。さらにヒッチハイクという手段もあるが、最近はその成功率も低下気味で(これも自分調べ)、身の危険率も考慮すると緊急事態に身体を張って止める場合以外はあまりお勧めできなかったりもする。しかし8時というのは意外に早い。定宿の朝食は7時半からなので、速攻で食べる必要があるからだ。 話が脱線したが、ようはこの一日7本しかないバスを有効に活用すると、意外に使い勝手もいいことをお伝えしたいのだ。ニュイ・サン・ジョルジュに朝10時のアポがあっても、この街には約束の1時間半前に到着できる。この時間を畑散策で過ごしたり、カフェで長めのコーヒータイムを楽しんだり、お金がないときはベンチに座ってただひたすらに人間ウォッチング。東京では考えにくいゆったりとした時間の流れを楽しもう。帰りは帰りで、夕方までバスはないのだから、隣村のヴォーヌ・ロマネでロマネ・コンティの畑仕事を眺めるもよし、ちょっと足を伸ばしてボーヌでショッピングもよしだろう。私の場合はドメーヌ訪問のアポは時刻表とニラメッコしつつ大格闘してたりするが・・・。バスはないけど、時間はたっぷりある。バスの時刻に合わせてその日の予定を組めれば、貧乏旅行なりの大いなる楽しみも満喫できるので結構幸せだったりする。 そしてようやく待ちに待ったバスに乗ると、あることに気がつくはず。夕方の通学時間帯を除いて、乗客が思ったほど多くないのだ。庶民の必要最小限の足の確保。そんな意味合いのバスに乗って、コートドールを駆け巡れば、ワインの味もちょっと違ってくると思うのは私だけではないはずだ。 おしまい Copyright (C) 2003 Yuji Nishikata All Rights Reserved.
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