本当はね・・・ (2003/07/21)

 
 鮑にも目がないんです。

 神奈川県藤沢市。ボウリング場手前の小料理屋「はせがわ」
にて、特別料理の鮑飯を頂いた。小ぶりのお茶碗には極薄い色のついた炊き立てのご飯がよそられ、隙間に薄くスライスされた鮑が数枚。油断すれば醤油を注したくなるような色合いながら、ぐっと我慢して頬張ることしばし。極薄味のそれは、うまみ成分の塊で、鮑から染み出したお出汁の風味が最高なのであった。ご飯をこれほどまでに大切に食すのは久しぶりであるが、なぜにこれほどうまいのか。鮑恐るべしなのである。鮑自体にはすでに味わいはなく、その食感のみを味わうに留まるものの、ご飯そのものがどうしてこんなにうまくなるかなぁと言うほどにうまい。磯の風味を味わいながら、くどくなく、しつこくない味わいに涙なのであった。

 いかようにすれば、これほど完璧なまでに炊き上げることが出来るのか想像だにできないが、今こうして現実の鮑飯が食膳にあるという事実に感激しつつ、久しぶりにご飯だけで四杯も平らげてしまった。この鮑飯は今宵限りの特注品らしいが、この時季の定番料理になってくれと祈りつつ、ごちそうさまでした。

 なお先日、築地某店で鮑を握ってもらったが、これもまた絶品であった。寿司にして良し、炊き込みご飯にして良し、夏は貝がうまいなあ。走れ。走らないと、大変なことが待ち受けている。走れ。このままでは秋物の服が確実に・・・。


おしまい


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