お門違いに、ふと思う (2004/01/08)

 
 最近、BSE(狂牛病)感染とSARS(重症急性呼吸器症候群)のニュースが紙面を賑わしているが、少し気になることがある。それは、お門違いの動物の死にちょっとやるせない気持ちになったりするからだ。

 アメリカは、BSE(狂牛病)感染牛の子牛を含む約450頭の子牛を予防措置として処分し、一切の使用を禁じるという。ニュースによれば、BSEの母子感染の可能性は低いといわれているようで、その処理には疑問を感じ、さらにはその子牛が特定できないために、その群れ全体を処分するという。アメリカが主要産業である「食」の安全回復に躍起になる姿は、否定するところではないものの、どうもお門違いの対策のように思えてならないのは私だけだろうか。

 中国は、SRASの感染源と疑われている野生動物のハクビシンについて、飼育されている広東省内の1万匹を5日以内に摂氏200度の圧力高温鍋で6時間にて処分するという。ハクビシンは、SARSの感染源として特定されておらず、疑わしいというだけで、全匹処分というのは、どうもお門違いの対策のように思えてならないのは私だけだろうか。

 私は動物愛護団体云々には属していないし、大の犬嫌いとして巷でも認知されつつあるものの、どうもこのふたつの事例は、やるせない気持ちにさせるのだ・・・・。動物がお門違いの対策のために殺されようとしている。

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 おいしいレストランでシェフ自慢の料理を楽しみつつ、ふと思う。

 この料理はすべて動植物の死によって、もたらされているということを、だ。食前に「頂きます」と手を合わせるのは、お命頂戴しますの意味も込められていると、どこかで聞いたことがある。そう思うと、命の大切さと食事の尊さを感じると共に、目の前の料理を残さず一所懸命食べたいと思う。真摯に食べることでしか、その死は尊べないと思うからだ。

 そんな食卓でのひとコマを回想しつつ、お門違いと思える牛とハクビシンの死と、ただ抹殺されるというなんともいえない居たたまれなさに、どうも今夜の酒はまずくなりそうだったりする。そしてデフレの象徴だった280円の牛丼の裏舞台がひょんなことからクローズアップされ、このままでいけば、しばらくは日本から牛丼が消え、そして復活する頃にはどうやらデフレも解消されようとは、何とも皮肉な出来事のような気がしてならなかったりする。

 今夜はちょっと硬派かな。


おしまい


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