海老で鯛を釣る時代は終わった (2004/02/12)

 
 BSE問題でアメリカの牛肉が輸入禁止になり、牛丼屋さんから牛丼が消えてしまった夜、ふと思った。

 アメリカ産牛肉の輸入再開のキーワードは、全頭検査またはそれと同等の検査による牛肉の安全の確保だと思われるが、アメリカ当局は全頭検査には科学的根拠がなく、日本側の主張は受け入れられないという。国内で全頭検査を実施している日本の立場と、生産量の小数点以下のBSE検査しか実施していないアメリカとの考え方の相違は、そう簡単に歩み寄れないほどの溝を感じたりもするが、ふと「全頭検査には科学的根拠がない」というアメリカ側の主張はどこかで聞き覚えがある言葉のように思われた。それは・・・

 捕鯨問題だ。そういえば捕鯨禁止にも科学的根拠がない。科学的根拠よりも感情論が優先しがちな捕鯨問題が、頭をよぎる。捕鯨禁止の大儀のひとつに生態系の維持が挙げられるが、鯨が増えすぎて逆に生態系を乱しているという報告もあり、このままでは鯨文化が消滅しかねない日本にとって、科学的根拠のない捕鯨禁止にはじくじたる思いがあるはずだ。BSEの全頭検査に科学的根拠がないというならば、返す刀で捕鯨禁止にも科学的根拠はないと切り捨てることはできないか。牛肉のBSE問題を逆手にとって、商業捕鯨再開にアメリカの賛同を勝ち取るチャンスと見ることは出来ないだろうか。これぞ外交カードそのもののような気がするのだが・・・

 牛で鯨を釣る。

 牛丼の代替メニュは、マーボー豆腐でも、イクラでも、豚でもない。鯨丼だ。

 BSEの妥協点に鯨を求めることが出来るなら、牛丼屋さんの新メニュに鯨丼や鯨汁が並ぶ日も近かろう。これは鯨を文化としてきた日本にとって願ってもないチャンスと思っているのは、私だけだろうか。アラスカに住むアメリカ人には捕鯨が認められているのだから、アメリカとしても悪くない話だと思うのだが・・・。
 
(ついに、いつものコラムが政治問題を俎に・・・? そう目くじら立てずに読み流してもらえると助かります・・・。ギュウよくゲイを制す。モウ。)

おしまい
2004年02月12日

目次へ    HOME

Copyright (C) 2004 Yuji Nishikata All Rights Reserved.