江戸を巡る冒険 鳥栄 (2004/03/22) |
先日、大森さん(仮名)を含むいつものメンバーと湯島の鳥栄さんで夕食と共にした。
ここは創業以来「とりなべ」一本やりの専門店として、また同時に予約が最も取れないお店として有名であり、なぜか予約の苦労もせずに訪問させていただき感謝なのである。湯島といえばHホテルが並ぶ独特の風情をもつ街だが、そんなネオンな一角に、昔ながらの江戸情緒を懐かしむ佇まいの違和感も面白く、神田の「ぼたん」と共通する趣を楽しんだりする。「ぼたん」が団体さんユースなのに対し、「鳥栄」は個室対応により、こじんまりと昔の風情を懐かしみつつ、極上のとり鍋に舌鼓、である。一軒家の二階だけの個室ゆえ席数も限られ、ひいては予約もとりづらいのだろうと思ったりする。 二階の個室に通されて、備長炭の焼け色も美しい、「とりなべ」を大いに楽しんだ。独特の薄味ベースながらしっかりとしたうまみに心も躍り、頃合を見計らっては胸、もも、内臓などを塩や大根おろし、山椒とあわせて頂戴すると、今まで味わったことがないような、どこにも同じものがないような、そんな上品な味わいが「鳥栄」初心者の心をくすぐってくるから不思議だ。肉が終われば、残ったまさに鶏がらスープを楽しんで、つくねに移行。油断すればまだまだ入りそうなくらいの腹具合だが、ここは名物?の「スープかけごはん」をお代わりしつつ、おなかもちょうどいい具合に膨れるからありがたい。 東京のど真ん中に、江戸が残っている、そんな感じを持ちつつ、この独特の雰囲気が面白い。 個人的な感想としては、そう毎回毎回とりなべを食べたいというよりは、この独特の趣を誰かに紹介してみたいと思うような、そんなお店かもしれない。何しろメニュは「とりなべ」しかなく味のバリエーション的にも厳しいものがあるが、この一種独特の雰囲気は、食空間の温故知新的な刺激に溢れ、このサプライズを駅伝のタスキよろしく誰かに伝えたくなるから不思議である。そして、時節柄の鳥インフルエンザの影響を全く感じさせない盛況ぶりに老舗かつ王者の風格を垣間見る思いもしたりする。 おしまい Copyright (C) 2004 Yuji Nishikata All Rights Reserved.
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