水割りを下さい (2004/03/22)

 
 その昔、「水割りを下さい」と歌った歌手がいたが、今まさに水割りブームの到来である。

 水割りと言えば、個人的には「え?、何を今更」的なお酒であったが、湯島のエスト(EST !)さんで頂戴した水割りは、そんな偏見を叩き割るほど強烈な味わいをかもし出していた。ウイスキーにこだわってくると、国産ウイスキーよりスコットランドのウイスキーの方がありがたがりがちになり(ん。言葉的にいいのかな?)、ヴレンデッド・ウイスキーよりもシングルモルト・ウイスキーを重宝し、さらにはオフィシャルよりもボトラーズを捜し求めたりしがちだが(自分調べ)、本当においしいものは、おいしいものを知っている人によってサービスされるお酒なのだと痛感する。

 バー・エストさんでは、ただ「水割りをお願いします」と注文し、銘柄などは聞いたりしなかった。しかし、出てきた水割りは、未だかつてないほどのおいしい水割りで、グラスの選択、注ぐ量、氷へのこだわり、水とのブレンド比率が、共に相乗効果を生み出して、甘く、何ともいえない心地よい味わいをかもし出してくれていた。凄い。テーブル席で身をよじりつつ余韻を楽しみながらおいしく頂戴していると、店主がこちらまでやってきてくれて、簡単に説明をしてくれた。酔いにかまけて銘柄は失念したが、どうやらすでに終売になっていて在庫分だけとなったブレンデッド・ウイスキーを使っているとのことだった。笑顔を絶やさず説明してくれる店主からは、お酒に対する愛情や思いやりが溢れていて、そんなお酒のレシピやエピソードを聞くだけでも心地よく酔えるから、うれしくなる。

 水割りがおいしいと、何でこんなに幸せになれるのだろうか。それは水割りが最も親しみやすく、お酒を飲み始めた頃の入門編的なお酒の飲み方にして、実は最も奥深い飲み方なのだと知る。ウイスキーの新たなる風が舞い込んできたかのようで、とても幸せだ。水割りは、それこそ水と氷とウイスキーとグラスがあれば誰にでも作れるが、ここで味わった水割りは、おそらくここでしか再現できず、我が家では決して味わうことの出来ないものだと思う。身近なお酒だけに、その奥深さにちょっと感激モード全開である。またケチクサイ考え方をするならば、ウイスキーの原価などを考えれば一杯800円の水割りは、決して安くないとは思いつつ、しかし、ここでしか味わえないお酒の豊かさとご主人の技術と愛情への対価と思えば、なんだか凄く安く感じられるから不思議である。

 本当はこのお店に足繁く通いたいのは山々なのに、ちょっとばかり自宅からは遠く、そう簡単には来られないところが、痛し痒しで思いは募るばかりである。そういえば、ここでしか味わえないおいしい水割りを口実に、初めてのデートに誘いつつ、湯島の街に飲み込まれるという作戦は使えるのだろうか・・・(笑)。

 湯島にバー「EST!」あり。感謝である。


おしまい

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