桜咲く (2004/03/29)

 
 某日、急に決まった都内某所での打ち合わせを終え、次の約束まで小二時間ほど時間があいたので、なぜだか上野公園の桜をひとりで見物に行った。いやいやなんとも、凄い人出だ。桜満開状態の上野公園は、日曜日ということもあってか、まだ日も高いというのに桜の下ではすでに大宴会が盛り上がっていた。両脇に桜を携えたメインストリートには満員電車よろしく、ちっとも進まない大渋滞が、日本に春の到来を知らしめてくれていた。早朝から誰かが陣取したと思われる囲いの中には、酩酊状態のおじさんから、ビールをグイグイ飲むOL風の女性まで、面白い人間模様が展開され、まんず平和な日本を象徴しているかのようだ。これから日が暮れると共に、一年に一度の名目で繰り広げられる酒飲み会も楽しそうで、ごみも散乱する道端に座っては酒を飲む風景に、うらやましさとなんだか感が交錯したりした。そして、その横を歩きながら誰もが携帯電話のカメラを桜に向ける姿は、ちょっと不思議な光景かもしれない。団体さんやらカップルが入り乱れつつ、用もないのになぜか桜渋滞に巻き込まれた自分に、再び「なんだかなあ感」がもたらされたのだった。

 しかし、これだけの人出である。公園内の常設トイレは、特に女性用には長い列が出来ていて、桜の下でビールをガンガン飲んでいる女性たちのそう遠くない将来の不安を思う時、この人ごみでは男ですら、屋外では厳しそうで、最悪の場合は駅まで行って入場券購入しつつ、安堵感を得るのだろうかと思ったりした。この大渋滞のさなか、駅までの長い道のりを考える時、むむむビールは厳しかろうと余計なお世話ながら、思ったりした。

 今週は関東地方のいたるところで、同じような風景が展開されるのだろうと思いつつ、桜の下の宴会にちょっとうらやましさを感じたりする小二時間の孤独な週末なのである。


おしまい

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