レストランとは・・・ その2 (2004/09/21)

 
 レストランでのエピソードといえば、そう、あれは、ずいぶん前のことだが、あたかも一昨日の夜の出来事のように思われることがあった。その夜は、とある中華料理屋さんでの夕飯を、気の合う仲間とワイワイガヤガヤと楽しく過ごしていた時のことだった。そこは通い詰めたお店につき、裏メニュなどを特別に用意してもらいつつ、楽しい夕べだった。そして、もうこれ以上食べれないということでお会計をお願いすると、おかみさんがちょっと待ってねと、たどたどしい日本語で語りかけてきたのだ。しばらく待っていると、なんとケーキが運ばれてくるではないか。

 その夜のメンバーの中に、その日が誕生日の人がいて、お店には特に伝えていなかったのに、常連ゆえに誕生日も把握されていたようで、イチゴの二段重ねのショートケーキをホールで用意してくれていたのだった。なにぶんここは中華料理店なので、ケーキは自前のはずもなく、駅前の某有名チェーン店のそれだった。特に有名なパティシエの作でもなく、それはごく普通のケーキで、ホールの中央に飾られたハッピーバースディのプレートには、「おめでとう」ではなく、なぜか「ありがとう」と書かれていて、微妙な言葉遣いに、ほほえましい違和感を覚えつつも、その気持ちに思わず目頭も熱くなるのだった。

 中華料理店で市販のイチゴのバースデイケーキを食べる幸せ。

 あの時の夜は、シェフとおかみさんの気持ちが込められていて、ケーキ自体はあまり美味しくないのだけれど、そんなことより大切な気持ちを味わわせてもらえ、とてもハッピーな気持ちになり、あっという間に全部を平らげてしまうころには、レストランとは、食事を美味しく食べるところという意味がズシリと伝わってくるのだった。

 ケーキは有名パティシエが作ったものだけが美味しいとは限らない。

 市販のケーキもとてもおいしい夜があることを知ると、生きててよかったと思うこの頃だ。


おしまい

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