おいしいそば (2004/09/25)

 
 東京メトロの千代田線根津駅を降りて、目の前の不忍通りを千駄木方向に歩き、根津神社入口の交差点を右折し、そのまま藍染大通りを歩いてふたつ目の十字路の右手に酒屋がある。その酒屋を取り囲むような形で、そばの名店「鷹匠」さんはある。風情な小道を歩きながら、突き当りの玄関をくぐると、清潔感あふれ江戸情緒を忍ばせる店内に、ほっとうまい蕎麦屋の予感を感じつつ、奥の下駄箱に靴をしまって、木製のうちわを取りつつ、座敷に腰掛けてみる。なかなかいい感じである。店主の女将さんにそばと蕎麦掻を注文し、店内を見渡すとすでに先客がいて、美味しそうにビールを飲んでいた。時刻はまだ朝の9時前にして、粋な蕎麦屋で飲むお酒は、確かに美味しそうで、なんだかとても絵になるから不思議である。残念ながら、その日の予定がいろいろあったので、ご相伴に預かることはなかったが、今度じっくりお酒も楽しみたいと思ったりした。

 「お時間かかりますが、よろしいですか。」

 手打ち蕎麦屋で、時間もかからず、蕎麦がすぐに出てきては、逆に困るというもの。注文を受けてから作るというスタイルに、やはりそんな待ち時間は鴨ネギなどを肴に一杯やりたいと思うのだった。和の屋敷といい、きれいな内装といい、伝統的なスタイルといい、ここは、いい蕎麦屋のオーラが随所に出ているようだ。いいぞ、である。

 今朝の新聞と根津界隈の情報誌を斜め読みつつ、そうこうするうちに蕎麦掻が出てきた。ここの蕎麦掻は、ゆるめのお餅の感があり、これにある風情のあるものを使って炙った?海苔を巻いて、お好みで塩やそばつゆをつけて食べてみる。美味だ。このモチモチ感が、なんともいえずお酒を呼ぶが、ここはグッと堪えて、舌鼓。遅れて新そばも登場し、蕎麦の香りを楽しみながら、お好みで築地の9号棟にある「からいもんや」さんの中辛の七味を直接に蕎麦にふっては、あっという間に二枚を平らげてしまった。

 「うまい」

 それがどううまいかは、行ってのお楽しみにするとして、この手の蕎麦屋さんにしては、量もそれほど少なくはなく、二枚でちょうどいい量かもしれないが、蕎麦掻の分やらを差し引くと、一体どのくらいの量的満足度があるかは、この日はちょっといろいろあってわからなかった(なにしろ築地経由だったもので・・・鮨・・・もちろんさ・・・)。

 そしてこの店の特徴は、その営業時間にありそうなので、ちょっと紹介してみよう。なんと開店は午前7時30分から9時30分までと、正午から18時00分までという。しかし、蕎麦はなくなり次第閉店してしまうので、早め早めの対応が求められそうである。事実、当日も私たちの午前中は最後の蕎麦だったようで、店主は売り切れを詫びながら、他の店員に違うものを薦めていたのだった。

 午前中に勝負をする美味しいお蕎麦屋さん。

 「鷹匠」とかいて、「たかじょう」と読むそのお店の暖簾は、一度ならずとも複数回くぐる魅力に満ち、しかし根津はうちからちょっと遠いのが、たまに傷な、そんなお蕎麦屋さんなのであった。上野界隈に行かれる際は、ちょっと根津まで足を伸ばしてみるのも、いい感じだろう。ただし月曜日と火曜日は休みのようだが・・・。


おしまい

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