とんぼ (2005/02/13)

 
 某日。いつも大変お世話になっている某氏らと、とあるお鮨屋さんにでかけた。ここは以前、中野坂上にお店を構えていた名店で、いまは銀座の思いもかけない所に移転して営業されている。

 ここのお鮨は、大変すばらしく、その姿からメスライオンと勝手に命名し、またいくつも出してくれる肴も含め、サプライズ系の劇場型お鮨として有名で、その夜も大変すばらしい時を過ごさせていただいた。ご一緒させていただいた某氏らは、私が初めてこの店を訪れた時と同じくらいなサプライズを感じてくれたようで、私は、お鮨そのものの美味しさももちろんだが、彼らの感激ぶりに、なんだかとても嬉しくなったのだった。

 入店前に「貝がちょっと苦手かも」といっていた某女史も、今までの概念を覆すような貝に、思わずその頬を緩め、また、食べるごとにその喜びをダイレクトに浮かび上がらせる某氏の笑顔も素敵であった。そして某氏の「しばらく普通の刺身が食べられなさそうで、うれしいようなかなしいような。」という感想は、これこそ、俗に言う、不幸の始まり、なのかもしれない。そして少し固めのシャリとの融合がすばらしいお鮨は、お酒(磯自慢)との相性も抜群で、味が分からなくならないように、ほどほどにセーブしつつ、それでもグイグイ留まることを知らず、ひのきの一枚板の美しさに、手をスリスリしつつ、最後に出してくれるデザート代わりの「ほおづき」の甘酸っぱい優しいお味が、銀座の夜を優しく包み込んでくれるのだった。

 サプライズ系の食事は、それを度重ねるとそのインパクトが薄まりがちで、このお店の場合には、移転前との比較も無意識に行ってしまうが、初めてご一緒させていただく方々のサプライズな表情が、心をふっと和ませ、また隣の松山からこの鮨を食べるために上京されたご夫婦とも和やかに、日本の鮨の頂点を目指そうとする大将のスキンヘッドな後頭部を横から眺めつつ、類稀な個性を持つお鮨屋さんでのいろいろな出会いに感謝なのである。

 お店の看板は、ビルの外にはなく、また雑誌関係の取材も今後は受けないとのことで、ここの連絡先を知るには、ちょっといろいろありそうだが、今後もますます知るひとぞ知る名店になって行くのだろうと思いつつ、もし適うのであれば、今後も、定期的には金銭的に無理なので、何かの折にお邪魔できればと思う。

 あ。ここのトイレに行くのを忘れた・・・。(トイレ・フリークとして無念かも)


おしまい

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