花の都の小ビール (2005/05/09)

 
 とある日の夕方、都内某所の某飲食店でお酒を楽しむ機会に恵まれた。

 そこは、東京でも最も華やかな繁華街の一角にあり、押しも押されぬ花の都・大東京。もちろん家の近所でお気軽に飲むお酒とは、価格帯が違うことは十二分に承知していた・・・はずだった。まあ、いろいろあるし、一杯だけならいいかなと入店したお店でもあり、そんな妥協点が後々の後悔に発展しようとは、そのときは薄々としか感じていなかった。そのお店では一番安そうなビールを頼み、出てきたビールは国内産の小瓶だった。なんだ普通じゃんと思いつつ、そのお店の売りは、大東京のど真ん中で、超高級なグラスを使用していることだった。そのグラスのせいもあってか、たった一杯の瓶ビールが、市販の小瓶にもかかわらず、過去最高金額の設定だった。それはあたかも学生街のチェーン店系の酒屋店なら、ちょうどこんなハッピーアワーな時間帯に行けば、その価格で無制限に飲めそうな、そんな価格だったのだ。

 しかし、入店してしまったものは致し方ない。ここは経験値を積むことだけを考えて、本当は一杯だけ飲んで、帰るつもりでいた。しかし、残念なことに?、ちょうど偶然隣に居合わせた方が、ハッピー系の酔っ払いで、妙に親しくなるうちに、なんだかその場の雰囲気を仕切られ、追加のお酒を頼まざるを得ない状況に進展してしまったのだった・・・。相当にハッピーなそのお方は、店員に振舞い酒はするは、人にガンガン飲ませるわの大盤振る舞いで、ついつい予期せぬ、というよりもここまで飲むんなら、「もしかしたら、初対面ながら、おごりなのかな」的な大宴会に発展してしまったのだった・・・。

 で、結局3時間もそこに居座ってしまい、会計を見ると予想通りの過去最高金額。食事はおろか、おつまみは一切とらず、ワインも全く注文しなかったのに、なぜか凄い金額が店員によって提示されたのだった。で、この場を仕切ったハッピーなお方に目をやると、さっきまでの超ハイ・テンションは影を潜め、普通の一般客に変身していた。それは、宮崎駿監督作品の「千と千尋の神隠し」で言うところのカオナシが、映画の後半で電車に揺られて・・・しっぽりとケーキをぱくつく・・・あの風景にそっくりだった。

 某氏らと「ええ!!!??」という反応をしたりして、なんだか不甲斐ない駆け引きが暗黙の内に行われ、ある程度はそれを覚悟はしていたのだからと承知して、それでも相当な出血を余儀なくされたのだった。まあ、3時間のエンターテイメントを楽しんだと思えば、納得できそうな金額に思えなくなく、高い時給だなあ的な感想をこぼしつつ、店外に出ると、そこは夕闇に煌々と光る大東京が展開されているのだった。東京って凄い街だなあ、と思った瞬間だった(田舎モン丸出しですが・・・)。うお、うお、うお、うおうおうおおおおおおお。こつこつとアスファルトにきざあむ・・・。

 ところで、あのハッピーな方って、お店のサクラなのかな? 

 違うだろうけど、そんな気もしてきたなあ・・・。


おしまい

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