「亡国のイージス」 (2005/08/02)

 
 昨日、阪本順治監督作品「亡国のイージス」を観た。

 かなり面白い映画だった。日本映画のレベルの高さを改めて感じ、あっという間の二時間強だった。かつての実写版日本映画は、無料で見られるテレビドラマとの差が顕著ではなく、宮崎アニメを代表とするアニメに遅れをとっていると思っていたが、いやいやどうして、十分にお金を払う価値のある作品だった。(1000円で観てしまってすみません・・・)

 良くも悪くも、そういえば、ブルース・ウイルスは出ていなかったなあと思いつつ、ハリウッド並みのリアルな映像は、手に汗を握らせた。そのリアルさは、例えば深爪したときのあの痛さを思い起こさせるほどで、それは甲板に後頭部を打ち付けて死ぬシーンなどに象徴され、ただ鉄砲で撃ち殺すのではなく、(そういうシーンもたくさんあるが・・・)、日本人の感覚というか、日常生活の延長線上にあるあっけない死を意識させるのだった。

 で、この映画は、何を言いたいのか。それは映画が終了し、出演者やスタッフなどのテロップが流れるエンディングロールに、思いが重なってくるかもしれない。(観客の半分近くは、このシーンを観ずに映画館を出てしまうのだが・・・もったいない)、それは阪本順治の名が最後に出てくる直前の、協力者リストである。

 防衛庁、海上自衛隊、航空自衛隊。

 そうなのである。この映画は、上記三者の全面協力を得ているのである。映画の本質は、まさに彼等のジレンマを表現していて、憲法第9条を有する立場上、彼等の本音は表に出てこないが、この映画を通じて、この映画に全面協力することによって、彼等の主張を、日本人に投げかけているのだろうと、思ったりする。

 世界中でテロが発生し、また独裁政権国家を近隣に抱える日本にとって、この映画のシチュエーションは、まさに今起こってもおかしくないほどリアルで、空恐ろしい状況にあることを、直視させる。その点で、この映画は必見かもしれない。戦後60年。戦争をタブー視扱いする期間が、少し長すぎたように思えてくる作品だった。そして、いやがおうにも戦争を意識させる8月中に、もう一度観てみようかと思ったりしつつ、いつものように一歩遅れて館外に出る私だった。


おしまい


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