400円 (2005/08/29)

 
 400円の価値観について。

 400円で買えるモノってなんだろう。400円のワインって工業製品的で、安すぎて買う気は起こらない。400円の缶ビールは高級感もあふれつつ、それが同じ価格でもビアホールだったらビールではなく発泡酒のような気もする。神社仏閣の拝観料なら、まあそんなもんかと思いつつ、美術館のそれなら安いと思ったりもする。コンビニ弁当も飲み物をつけなければ、それくらいか。おにぎりなら3つは買えるだろう。

 で、それが6枚入りの食パンだったら・・・。

 神楽坂の某パン屋さんの食パンは6枚で400円もする。一瞬高いと思わせるが、そのお味は、絶妙で、パンの耳は堅くしっかりとしていて、中身の生地はシルキーでしっとりとしていて、とてもおいしい。サンドイッチにしたら中身が負けそうなほどパンとして成功していて、耳も、そのしっかりとした歯ごたえに、固定客は多そうな感じである。(ただ耳と生地を同時に食べると、堅さのバランスが悪く、ちょっと微妙な味わいになるが・・・)

 400円と思って食べると、不思議な感覚が生まれる。食べる前は、高いと思わせ、食べると、うまいと唸らせ、食べ終わると、安いかもと錯覚したりする。400円の価値観は、不思議だ。400円を意識しなければ、普通のパンとは違うけど程度の認識しか持たなさそうで、しかし意識すればするほど価格から来る先入観に惑わされそう。

 そしてとても不思議なことに、もこの400円の食パンは、誰かに食べてもらいたくなる。

 「これ400円もするんですけど、どう思いますか・・・。」

 その答えは、その場で食べてもらえば、表情からうかがい知ることもでき、なんだかドンドン、人に食べてもらいたくなるから不思議だ。そんなわけで、私が神楽坂に行った夜に、私と出会った人にはもれなく食パンがついてくる日々が当面続きそうな、そんなパンがマイブームだったりする。そして思う。このパンの味に慣れてくると、きっと世の中の食パンの大半は、おいしく感じられないんだろうなあ、と。不幸の始まり・・・食パン編に突入かも(笑)。

 
おしまい


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