東京最高のレストラン ??? (2005/12/24)

 
 東京最高のレストランと題した本が、今年も発売されている。以前は、とても参考にしていた同書だが、今年は書店で斜め読みするうちに、ちょっとした異変に気づいてしまった。今年の号は、どうも変だ。ナニが変なのか・・・。

 同書で紹介されているレストランのいくつかには私も実際に足を運んで、いろいろ楽しんだり、悲しんだりしているが、今回の号は明らかに、自分調べながら、ちっともおいしくないレストランのいくつかが、上位にランクインしているようだ。これってどういうことだろうか。とても不思議な感覚に陥る。例えば、うまみ調味料を多用するお洒落な高級某店や、素材のうまみよりも塩コショウによるハイ・インパクトな味付けを重視する某店や、銀座の名声に胡坐をかいてしまった某店や、パンが冷めていく某店や、従業員自らが「今年はごめんね、でもきっとおいしいお店にするから」と誓ってくれた某店や、予約が取れないというよりは、予約が取れないシステムを構築しているだけの某店などが、堂々とランクインしたり、別枠で紹介されていたりするのだ。

 「おいしい」の基準は人それぞれなので、万人がおいしいと思うレストランなどありえないだろうが、あきらかに「おいしくない」あるいは「たのしくない」または、「楽をしている」と思わざるを得ないレストランが、「東京最高」の名の下に紹介される違和感に、ケツのすわりの悪さを覚えてしまうから悲しくなる。

 東京には、本当に最高のレストランってあるのだろうか。同書を読んでいて、とても不安な気持ちになりつつ、この本をレジにもって良く勇気はついぞ芽生えなかった。かつてフランスの三ツ星レストランに過剰な期待をもち、しかし、たいしたことなかったと思ったことがある者にとって、「東京よ、おまえもか」と言いたくなるのは、私だけであってほしいと願ったりする。そういえば、今日はクリスマスイヴ。同書を頼りに予約をしてしまったカップルに幸あれと大きなお世話ながら、願っておこう。

 某出版社を退職してフランスに留学中の某女史をして、「おいしい」で評判の某店について、「あのお店は素敵なお店だけど、楽な仕事をしている、全然駄目。」と切り捨てた台詞が蘇ってきた。彼女の言葉に当時は反感を持ちつつも、同書を書店で斜め読みしつつ、なぜだか急に共感を覚えてしまうから不思議だ。

 東京には、最高のレストランて、いくつあるのだろう。


 おしまい


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