大西泰斗という人 (2006/01/04)

 
 年末から年始に掛けて、NHK教育テレビで繰り返し放送された語学番組があったことをご存知だろうか。

 それは「ハートで感じる英文法」とタイトルがうたれた番組で、昨年の下半期に3ヶ月間放送されたものの再放送と、それを一気に放送したスペシャル番組のことである。劇団第三舞台を主宰した鴻上さんらを生徒役に、大西泰斗(おおにし・ひろと)という先生が、まさしくハートでもって英語の魂を伝えようとするもので、正直言ってこの番組には感動せざるを得なかった。凄いの一言であり、大西という人のオーラを体感した心地よさが余韻となって続いていくいい番組であった。

 大西泰斗先生は、有名短大の教授らしいが(検索してみてください・・・)、その風貌は出っ歯なメガネ。私が言うのもおこがましいが、とてもハンサムと言うわけではなさそうなのに、教え子役の女優さんが、みるみる彼のワールドに引き込まれ、そして恋に落ちていくかのような情景がテレビ画面に展開されてからに、なんとも微笑ましかったりする。

 おそらく、日本の中学校と高校に大西先生のような人が英語の教鞭をとっていれば、日本人のほぼ全員がネイティブと同じように自由に英語を使いこなし、とてもハッピーな生活を営んでいたであろうに、残念ながら日本にはそんな教師は少ないようで、日本人の英語力のレベルは周知の通りとなってしまっている。これは自分の英語力を棚に上げつつ恐縮であるが、残念なことであり、しかし一方で彼を発見したNHKの能力に敬意も表したくなる。

 大西先生は、既存の英語教育を否定している。そこにはハートがないからだという。助動詞、must , can , will , may の基本ニュアンスや過去形の基本ニュアンス、そして前置詞のそれら・・・。例えば、so that構文を丸暗記するような単純作業からは決して芽生えない英語のもつハートを、大西先生は意図も簡単に伝えてくる。サプライズと共に、目からうろこが落ちる瞬間が体感できるから、とてもすばらしい。

 リズムよく進む番組と、生徒役の裏を書くような展開のよさに、時間を忘れて英語の魅力に染まっていく。

 そういえば、大西先生は某日仏学院のフランス語講師の某相羽先生に、その風貌も語り口も似ている。語学の教師には、例え言語は違っても共通する頭蓋骨の形があるのかと微笑みながら、この番組を作り上げるまでには10年の歳月を要したという番組中の何気ない一言が、私の心に突き刺さる。面白おかしく、サプライズのある授業を展開するには、その裏で途方もない歳月と努力があることを忘れかけてしまうことを恥じ、こんな凄い番組は各校に有償配布して、学校と言う現場でも大いに活用してもらいたいと思ったりするのだ。

 そして朗報。明日の夜から、会話編がスタートするらしい。毎回ビデオに撮って、繰り返し勉強すれば、ようやくボクも私もネイティブスピーカー?????

 おしまい


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