駅前の風景 (2006/01/18)

 
 私は、ある日、見知らぬ駅に降り立った。ちょうどお昼時ということもあり、どこか適当なところで御飯でも食べようと思い、駅前ロータリーから商店街まで何か適当なお店はないかと数分ほど歩き回ってみた。この駅は比較的大きめの駅であり、商店街も充実していて、この街では、何不自由なく生きていけそうな規模の町並みだった。

 駅に隣接して立ち食い蕎麦屋さんがあり、ハンバーガーのチェーン店と大手牛丼店、アメリカ系コーヒーのチェーン店、中華料理店、ラーメン屋さん、古くからありそうな町の食堂のようなお店、蕎麦屋さん、ファミリーレストラン、コンビニエンスストアなど、いわゆる日本のどこにでもあるような風景が展開されていた。

 ここで、ひとつのキーワードを投げかけてみた。それは、アンチうまみ調味料ということ・・・。

 するとどうだろうか、目にする食べ物やさんの、ことごとくすべてが、そのキーワードでは消去されてしまい、この町では何気に食べるものがないという現実に直面してしまったのだ。どうしよう。腹は減れども、食後のあの残存感を意識すると高いお金は払う気になれず、「ランチには、わかめスープがつきます」の様な看板を見た日には、なんだか食べる前からあの残存感が私を襲ってくるのであった・・・。

 おそらくは、探せばこの町にも、もちろんアンチうまみ調味料のお店はあるのだろうが、過去の経験からして、その確率はことごとく低く、一見の町でそんなお店に出会えるとは到底思えないところが辛すぎでなのある。

 しかし、腹は減っている。

 ということで、私がとるべき道は、ふたつ。もしどこか近場に公園などがあり、そこで御飯が食べられそうなら、コンビニのおにぎりとお惣菜パンを求め、早々に胃袋への投入を終わらせるか、あるいは外での食事は寒かったり、なんかするなりして無理だとわかれば、牛丼屋さんに直行するのだった。この日は寒いということで、牛丼店に決定した。ワンコインで空腹が満たされるなら、それはそれでよしと思ったりするからだ。

 初めて訪れた町で、食べるものがないという現実。自然派にこだわり、食のうまみのこだわればこだわるほど、日本の外食がうまみ調味料に支配されていることに戸惑いを覚えざるを得なかったりする。うまみ調味料多用店について、ワンコインなら許せてもツーコインだと途端に厳しくなるのは、自分の了見が狭いからだろうかと思いつつ、ただ食うための食事に戸惑ったりするのだった。
 

 おしまい


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