カレーといえば、スプーンではなく、フォークで食べるものであり、この定説をいまだ知らない人に出会うたびに、その理由をとうとうと説明するのだが、先日某女史から思わぬ逆襲を受けてしまい、この定説にも例外の存在を認めざるを得ず、自分的には苦しい立場に追いやられてしまった。

　カレーはもちろんスプーンで食べるというその女性に、私は待ってましたとばかりにガツンと身を乗り出した時、彼女は予想もしなかったことを私にあっけらかんと告げたのだった。

　「そのスプーン、漆塗りなんです。」

　ううう。その手があったか。それではスプーンの最大の弱点をカバーしてしまっているうえに、そいつで食べるカレーは、想像するだけでも、なんだか、とてもうまそうではないか。こいつは一本とられた。今度真似っこしてみなければ・・・。カレーの食べ方に、思わぬ盲点があったとは・・・ざんねん。


　おしまい


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