「死にカタログ」 (2006/02/27)

 
 「死にカタログ」 寄藤文平 大和書房

 本屋で立ち読みしていて、気になった本が「死にカタログ」だ。この本は、その書店の店長お気に入りカードと共に紹介されていて、漫画を多用しているために、本来重いテーマのはずの死に対して、コミカルにアプローチでき、古今東西の死生観について大いに学べそうな予感も漂い、また正方形に近い不思議な形も気に入って、とりあえずは買ってみた。

 失敗した・・・。

 本屋で立ち読みしている分には、楽しかった同書も深夜に一人で読みふけっていると、なんともその世界に没頭してしまい、死の恐怖に、どうしようもないほど苛まれることになったからだ。眠れぬ夜をしばらく過ごし、翌朝は怖い夢の有耶無耶な終焉と共に目覚めるという最悪の事態を迎えてしまったからだ。久しぶりに怖い夢を見てしまった・・・。

 そもそも本屋で立ち読みしている分には、背後や横に人の気配を感じ、雑然とした中で、死というものを客観視でき、たとえばひとは死んでコオロギになると思っている民族や、日本の地獄は地下8階建てになっていて、それぞれのフロアーでは異なるサービスが受けられるなど、各宗教や民族による死の扱いがコミカルにアプローチされていて、あははと思わずほくそえんだものだった。

 しかし、深夜の蛍光灯のしたで、ひとり同書を読み進めるていくと、「死」を無理やりにでも押し付けられ、それはそれは怖いものとして考えざるを得なくなってしまったのだ。まさにそれは「死にカタログ」だった。

 というわけで、興味のある方に差し上げようかと思いつつ、太陽の下で読む文には、結構笑えてもくるので、話のネタにお困りの方にまずはお貸ししようかと思ったりするこの頃だったりする。(この本は、真昼間か、人ごみの中で読むことをお勧めしつつ、あなたは、笑いの後に襲ってくる、この恐怖に耐えられるでしょうか・・・・)


 おしまい


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