本館と別館を行き来するもの (2006/03/06)

 
 先日の夜、小雨降る某街を歩きつつ、いろいろあって一軒の居酒屋で食事をすることになった。ここはもうずいぶん昔に何度か通ってことがあるお店で、この街の中小企業の社長さんたち御用達系という評判もありつつ、久しぶりにその暖簾をくぐってみたのだった。ここは本館と別館に分かれていて、本当は別館のほうに行く予定だったが、ずいぶん前から別館は完全予約制になっているらしく、従業員の案内で道(それも車がきっちりすれ違えるくらいのちゃんとした道)を挟んだ向かい側の本館に行くことになった。店内のカウンターは満席だったので、入口横の四人がけのテーブル席(一段上がっての掘り炬燵のような感じ)に陣取ってみた。

 ここは入口の真横で、その自動ドアが開けば外の風景も容易に見られ、少し横殴りの雨も降ろうものなら、少しばかり濡れてしまいそうな、そんな場所だった。お料理は、とりあえず湯豆腐とソラマメを注文して様子を見つつ、ビールを片手に、お通し三種盛りで、とりあえず団欒モードに入ろうとしていた。

 ところが、この場所・・・意外と言うか案の定というか、最悪の席だった。というものこの入口の自動ドアがひっきりなしに開閉するのである。なぜか。それは、従業員がこの正面玄関とも言うべき入口を頻繁に行き来し、そのたびにドアは開き、外の雨が感じられ、冷気を伴った風が私の頬に当たるからだった。どうやらこの店は、本館で刺身を、別館で揚げ物や焼き物、鍋の下準備をしているらしく、本館でその手の類が注文されると、従業員が本館の正面玄関と別館の勝手口を往復して料理を運ぶシステムらしかった。

 その日はあいにく雨が降っていた。そしてお客もそこそこ入っていた。

 ということで、別館で造られた料理は、数メートル離れた本館に運ばれることになり、そのたびに揚げ物や、焼きあがったばかりの料理に水滴がつき、私の心はそのたびに曇るのだった。げげげ。ナンダココハ。男性従業員は急いでいるためか傘も差さずに往復し、そのために料理は雨にぬれ、女性従業員はビニール傘を差しては往復していたのだが、一度自動ドアにはさまれて、できたばかりの料理が道路と店内の中間に斜めに落ちて、無残な残飯と化してしまった。当然のように雨にぬれた料理は、その出入り口を背中にしているカウンター席のお客や奥のテーブル席へと運ばれ、何事もなかったかのように、サービスされていた。

 しかし、私の位置からはそんな一部始終が完璧に見えてしまい、そこはもう私の限界値を超えて久しい領域に達していた。本館と別館で行き来するお料理には、一階で作った料理を二階に運ぶお店があるように、それ自体には文句はないが、次の点で私を狼狽させるのだった。

 1.お料理が雨や排気ガスにさらされていること。
 1.従業員が正面玄関を頻繁に行き来し、そのたびに寒さと雨が私を直撃すること。

 そんな最悪のシチュエーションで注文した湯豆腐がやってきた。

 うーん。ここから先は予想通りの展開になるので、ちょっと休憩しよう(笑) 以下工事中


 おしまい


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