フランス人の箸使い (2006/03/19)

 
 先日、ご縁がいろいろと重なり、平塚の某和食店さんにてワイナリーを経営される某フランス人ご夫妻らと会食をする機会に恵まれた。ここは有機野菜のうまみを絶妙に引き出す名店と知られていて、フランスワインにも日本ワインにも、そして自然派ワインにも造詣が深いご主人の「和」のお料理と自然派ワインのマリアージュにテーマを絞りつつ、素敵な食空間は展開していくのだった。

 で、ここはもちろん和食ということで、当然お箸を使うが、なんと、フランス人のご主人の箸使いはお見事の領域に達しており、それは気持ちよく食事をご一緒させていただくことができた。聞けば、かつて父親がベトナムに住んでいたことがあり、帰国後家庭で箸の持ち方を伝授されたのだという。奥様も、ややぎこちなさはあるものの、食べ物紹介番組に登場する芸能人より、美しく箸を持ち、なんだかとてもうれしくなってしまうのだった。

 お箸はアジア、日本の食文化。

 その文化を初めて日本を訪れたというフランス人に尊重していただき、うれしくないはずがない。また料理好きのご夫妻は、日本のお出汁に興味を持たれ、そのとり方を昆布と鰹節の現物を手に取り取り、ご紹介させていただいた。そしてそんなお出汁の効いた椀物の食べ方にも話は及び、なぜ椀物に蓋がついているのか、その意味と作法を職人さんの協力の下、言葉の違いを超えて、その情報を共有したのだった。

 椀物の蓋を開けたらすぐにその香を楽しむべし。椀に籠められた春の息吹を、共感し、俗に言う三秒ルールを体感。そして食べ終わったら、その合図として蓋を元に戻し、職人さんとの言葉を交わさない意思の疎通を確認したのだった。

 「おいしい」は顔に出て、その仕草に現れる。

 日本の食文化に興味を持つ異国の夫婦と、日本とフランスの自然派ワインを飲みながら、それらはたいそうおいしく、食文化の尊さを改めて感じさせてくれたのだった。お箸の持ち方が美しいと、食事は俄然おいしくなって、楽しくなる。だからお箸を大切に、そして正しく持ちたいものである。すべてはおいしい、のために・・・。


 おしまい


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