美しさのトライアングル (2006/09/19) |
都内某所の一流和食店では、ワインと和食の出会いを楽しむことが出来るが、先日そこのワイングラスのうちシャンパーニュグラスが、オーストリアのロブマイヤーに取って代わられた。
何度か訪れたことがある、あの美しいカウンターに、ロブマイヤー・バレリーナ・チューリップ・トールが置かれ、穏やかな表情の店主が仕事の手を休めて、シャンパーニュを丁寧に注ぐ風景を想像すると、とてもうれしくなってくる。おいしい和食は、もちろんお酒とも焼酎とも相性がいいが、シャンパーニュとも抜群の組み合わせを体感してしまうと、ちょっとたまらなくなる。繊細で、上品な和のお料理に、ロブマイヤーが映える時、日本でしか体感できない極上の世界観が生まれるようで、なんとも心地よい。 檜のカウンターに、あのグラスが置かれている光景を想像してみよう。 日本の美とオーストリアの美が、フランスの美を両側から支える構図が浮かび上がってくる。美のトライアングルとでも言いたくなる極上の三角形。美しいものは、美しく楽しんでこそ、その美しさが表現されると、信じている。エレガントで通じる食の世界観を体感するために、あのお店に何度も行ってみたい。それは実際に暖簾をくぐるよりも前に、その美しさを想像するだけで、喜びが浮かび上がってくるから不思議なのだ。人気店ゆえに予約も取れず、運良く取れたとしても高額な和食店には何かの理由がなければそうそうには訪れることは出来ない。しかし、あの風景を思い起こすだけで、なんとなくそのご相伴に預かれたような気もしてくるから、想像力は磨いておこうと思ったりもする。 食の美しさ。 それは、一瞬の芸術にも似て、とても儚い。温度があり、鮮度があり、バランスがある。そしてその美しさは、その美しさのために、命と生活をかけている人が何人もいるのだから、金額的な代償も伴わなければならない。日常的には、ちょっと近寄りがたいが、一度その美に触れると、生きていてよかったと思わずにはいられなくなる世界がここにある。この世に生を受けた以上、食の美しさは、自分の生活にぜひとも取りいれたいと思う。そして、そんな一見敷居も高そうな世界の水先案内人になれたら、きっとその仕事は美しいのだと信じたりする。 ぜひ一度、その美のトライアングルを体感してみませんか。すごいかも。 おしまい Copyright (C) 2006 Yuji Nishikata All Rights Reserved.
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