新宿怖い (2007/03/28)

 
 私の行動範囲の中で、最近ぽっかり穴が開いてしまっているのが、新宿駅界隈。昔は西武線沿線に住んでいたこともあるので、何気に毎週のように新宿は経由していたが、そんな話も今は昔。「東京は怖い街だよお」という田舎大好きな某女史の言葉も身にしみて、新宿のごみごみした街の風景が、田舎暮らしの私には、落ち着く居場所もなくなって、とりあえずは敬遠する街の代表になってしまっていた。

 で、そんなこんなで、いろいろあって久しぶりに新宿で飲む機会に恵まれた。待ち合わせの時間まで余裕もあったので、新宿界隈を大いに歩いてみよう。うー。人が多すぎて、空気も悪すぎて、なんだかすぐにいやになってしまった。しかたがないので、落ち着く場所を本屋さんに求めて、いつになく長めの立ち読みをしたりした。私の隣で某有名人も立ち読みしていて、さすが東京の本屋さんは一味違うなあと、思うのだった。そしてようやく、時間になって、友人と合流しつつ、とあるワインの飲めるオサレな居酒屋さんに行ってみた。満員の店内は、さすが新宿、すごい人間たちだなあと余所見をしては、仕切りのある小上がりに通していただいた。しかし着席するや否や、私はいやな空気を察した。タバコくさいのだ。よく見れば後ろの席ではタバコをすいすい、ワインを飲んでいて、私のモチベーションはまっさかさまに落ちていく。しかたなく店員さんに無理言って、席を移動させてもらい、カウンターへ。ううう。こっちはもっとひどくて、座ってまもなくすると、両サイドと後ろの席からも煙が上っていたりした。もっとひどいところへ移動してしまったようだ。禁煙席もあるらしいのだが、予約でいっぱいとのことで、ここであきらめてワインを飲むことにした。

 駄目だった。

 やはりワインはタバコのモクモクとした空気の中で飲んでも、なんらの感慨もない。そして出てきた料理も、湘南界隈の、素材にこだわり、食にリスペクトを持つお店での美しいお料理を食べなれている者には、容易に受け入れがたい、厳しい味だった。それは一言で言えば、すこぶる適当な味。別の言葉に置き換えるなら、「撃沈」。それなのに、不思議とこの店は大繁盛している。若者たちでごった返しては、にぎやかな店内は、そこで語らう人たちの頬も赤いのだった。これが東京。これも東京なのかと、感慨もますます深くなりつつ、とりあえずはそんなに安いわけでもない会計を済ませ、店を逃げるように出てしまった。

 で、どうも収まりが悪いので、西口の某高級ホテルの40何階のバーに贅沢にもタクシーで移動して、少しばかりのお酒を飲んだ。ここは東京屈指のハイクラスな空間にして、外国人比率の高い店。新宿の夜景を眺めながら、ジャズの生演奏を聴き、オンザロックの氷もゆっくりと溶けるというもの。そしてここも満員だった。エレベータを途中で乗り換えなければたどり着けない、とてもわかりにくいバーなのに、満員なのだ。東口のお店とは、すべてが異なる雰囲気を持ちつつ、タバコの煙だけは共通していたが・・・。店内をよく見ると、ニューリツチ層や外国人ビジネスマンたちなどのいわゆるお金持ちチームと、サラリーマンのたまには贅沢しようよ系の人たちに分別することができて、このハイソな空間に集まる人たちのバックグラウンドを想像するのも楽しかったりした。私だけが、異質なところからやってきた感を拭いきれず、二杯のお酒とおつまみ1品だけで、1万円という価格設定に、あらためて「東京は怖いよお」という某女史の言葉がよぎるのだった。

 東京・・・。そこは料理がたとえまずくても、酒が高くても、タバコの煙がむんむんしても、にぎやかな街。東京。その昔、東京にあこがれていた時代が懐かしく思われ、田舎暮らしのおいしさに慣れてしまったものには、東京の、それも新宿という街は少しばかり縁遠くなっていくのを痛感したりする。そしてなかだかやたらと軽くなった財布を持つ手も震えてしまう。あの値段なら湘南界隈の某店や某店や某店などで、もっと健康的に、心地よく、そしておなかいっぱいに幸せになれるのに・・・。残念ながら?、夜景はもちろん見えないけれど・・・。

 東京、ほんとに怖いかも(笑)


おしまい

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