歌は世につれ (2007/06/12)

 
 歌は世につれ、世は歌につれ・・・。

 先日、部屋の一箇所を占領するCDの塊をいろいろ整理していると、ル・クプル(Le Couple)の「ひだまりの詩」を発見し、そのまま、ずっうと聞き入ってしまった。(この時点で整理整頓は永遠の中断に入ってしまったのだ・・・こんなことばかり繰り返しているなあ(笑)。)

 この歌を聴くと、あの時、10年前、ひたすらに鳥海山を車で走り回ったころの記憶が呼び戻され、秋田から酒井へと続く日本海岸の国道の風景が、鮮やかに蘇る。

 「ひだまりの詩」は、フジテレビのドラマ「ひとつ屋根の下2」の主題歌だった。ドラマ自体の記憶はあまりないが、この歌のメロディは、鳥海山を目指した日本海の風景に重なって、なんだかしみじみとしてしまうから辛い。あの時、なぜ鳥海山を目指したのだろう。メロディに乗せて、歌詞を口ずさみつつ、ふいに、ああ、だから鳥海山を目指したんだと思い出され、それは、なんだか10年の歳月に息苦しさと、切なさとを感じさせ、そしてまた、今宵もピノ・ノワールが恋しくなるから不思議なのだ。

 何があったのかは、ここでは明らかにしないけれど、秋田市から鳥海山までの長い道のりは、今も鮮明に思い出される。忘れかけていたあの風景が、ひとつの歌とともに思い出されては、胸を打つ。歌は世につれ世は歌につれ・・・。音楽の力にあらためて感服するとともに、そんな思い出の曲がひとつやふたつあってもいいもんだと思ったりする。

 当時は、le coupleが何語なのか、ましてやその意味も知らなかったが、10年の歳月を待たずして、それがフランス語であることを知らしめて、フランス語の本をペラペラめくる生活をするとは、このときは微塵にも感じなかっただけに、なんだか時の長さと、もうあの頃には戻ることができない現実が、この歌のメロディとともに、私を少し苦しめたりする。

 ていうか、最近は、こんな便利な世の中になっていたんですね。
 http://www.youtube.com/watch?v=DwGGZ5nfjzI

 なんか、この映像はリアルだけど、この映像では、私の鳥海山の記憶は、蘇らない。視覚からではなく、音の記憶からしか私のあの頃は蘇らないから不思議だ。


おしまい

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