背中を見つめて・・・ (2007/12/24)

 

 先日、いろいろあって、ほぼ一年ぶりに訪問しました。

 Le jardin des saveurs(ル・ジャルダン・ デ・サヴール)

 日本のフレンチの先駆者の一人である中澤シェフには、回転寿司に一緒に行ったり、甲府でおいしい料理を作ってもらったり、ロブマイヤーとの競演と題するワインセミナーを開催させて頂いたりと、いろいろとお世話になっており、一年のブランクという不義理をお詫びしつつ、友人某の役員昇進と給料の大幅アップの祝いを兼ねて、お邪魔しました・・・。

 中澤シェフを含め、シェフの世代は、ミシュランには、なぜかことごとく無視された感も否めませんが、中澤シェフなくして、日本のフレンチは語れないと信じつつ、夜のコースを堪能させて頂きました。ここは、銀座の一等地にあるフレンチレストラン。半円状のカウンターと一組分の個室だけという不思議な空間。若き伊藤ソムリエとの不思議なコンビに、フレンチをこよなく愛する客人や何年も付き合いのあるという常連さんたちの心と胃袋を満たしてくれているようです。(残念ながら、私は青山時代を知りません・・・。)

 中澤シェフのお料理には、私が日ごろからお世話になっている若手のシェフ(注)たちから感じるようなパワーや斬新さを感じることはありませんが、伝統と技術、そしてなにより「あなたのためにこのお料理を作っている」という意思が、端々に感じられつつ、(もちろんこの点は、若手シェフも大いに・・・)、あの独特の辛口トークとお茶目な笑顔が食卓をハッピーにしてくれます。 オープンキッチンゆえに、中澤シェフの仕事を眺めながら食べるフレンチ。伊藤ソムリエの若さとのギャップもまた、たのしいのです。ただし、あの辛口トークゆえに、相性の合わない人はたくさんいるものと察しますが・・・。

 そして、シェフの背中には、どこか哀愁が漂います。

 それはフレンチの心と技術を守り続けた何十年の重みとでも言いましょうか。変わらぬ安心感といいましょうか。この背中を見つめて、多くのシェフが育って行ったことと思います。それは、実際に現場をともにした料理人もいるでしょうし、雑誌などでその技法を学んだ料理人もいることでしょう。その視線の多さを、あの背中に感じるのです。これは平塚の名門フレンチ「マリー・ルイーズ」の尾鷲シェフのそれとも共通しつつ、一流を張り続けている男の背中なのだと思います。

 若手料理人の活躍に、感激と感動を覚え、時々、先人たちの技と心を楽しむ。同じフレンチという枠の中でも、いろいろな立場や考え方があり、(ミシュランは、フランス料理と現代風フランス料理の二つに分けましたが・・・)そのエッセンスを感じることもまた、楽しい作業です。

 背中で食べさせるフランス料理・・・。美味です。そして食をめぐる冒険はずっと続きますね。

 
 おしまい

(注 カンテサンスの岸田シェフ / ブラッスリーHxMの菊池シェフ / ビストロ・ノーブルの河津シェフなど多数)
 

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