その瞬間、すべてが不幸だった (2008/04/18)
 



 おとといの話。

 夜中の11時半過ぎ。高速道路の出口からしばらく走ったところにあるコンビニと書店が合体したようなお店に、立ち寄ったときのこと。とりあえず、風呂上りのビールでも買おうかと思い、(ビール大好きですから・・・)、まずは立ち読みでもしようと本屋コーナーの方へ歩みでてみた。雑誌を数冊ぺらぺらっと眺めては、文庫本のコーナーに辿り着くと、そこには明らかに小学生と思える少年が、平積みの本の上に腰掛けて、売り物の本を座り読みしていた。えっまじ。私の動揺が早いか、少年の行動が早いか。ふいっと、私の存在に気づいたその少年は勢いよく立ち上がり、バツが悪そうに、違う文庫本を手に取り直して、今度は立ち読みの体勢を整えていた。私もなんだかバツが悪く、少年の前を通り過ぎては、コンビニ部門の方に寄って、ビールを二本冷蔵庫から取り出して、レジでお金を払って、フェラーリ(号)のドアを開けてしまった。

 うーん。今思い返しても、この光景は、すべてが不幸かもしれない。

 まず第一に、深夜のコンビニに少年がいること自体が不幸だ。

 少年の家庭環境がどんなであるかは大きなお世話でありつつも、

 そんな時間に、こんな田舎町で、小学生が出歩くことは、昔なら考えもつかない。

 ましてや、平積みの本(商品)に座るなんて、ありえない光景だ。

 さらにそれを店員が気がつかないのか、

 注意しないのも寂しい限りで、事なかれ主義なのだろうか。

 そして何が悲しいって、

 それを目の当たりにしながら、なにもいえなかった自分自身にも違和感を覚える。のだった。



 深夜の少年と店員と私が、何の因果かすれ違ったあの瞬間。



 私の人生的にもかなり不幸な瞬間だったような気がして、

 あの時買ったビールを唐津焼に注ぎつつ、そんなことを思ったりした。

 「本の上に座るな」

 少年にそのメッセージだけは伝えるべきだったような気がして、

 でも結局は何も言えない自分の器量の小ささと不甲斐なさに、

 今宵のビールは、やけに苦いっす。



 おしまい
 
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