東京・・・怖いよお 麻布十番 (2008/06/14)
 



 東京には東京にしかない凄みというかオーラというか存在感があって、そのたびに東京という街に打ちのめされたりする日々を過ごしつつ、その東京の一面に迫ってみようというシリーズです。六本木に続いて麻布十番・・・。

 先日、日ごろ大変お世話になっている某氏と某氏に誘われて、麻布十番の某日本料理店で、杯を交わせさて頂き、極めて嬉しかったりした。この麻布十番、じゅうばんの「う」を発音しないで読むと、なぜかフランス語に聞こえるんだよなあと思いつつ、神奈川県の田舎育ちの私には、どうやって行ったらいいのかわからない街、ナンバーワン的な、それこそ、おしゃれな東京のシンボル的な街だったりする。今でこそ、地下鉄が乗り入れていて便利になっているが、神奈川県民の私には縁遠い街であることに違いはなかったりする。

 で、そんなギヨーカイ関係者が深夜に食事を楽しんでいそうな麻布十番で、私も公園デビューならぬ、十番デビューをすることができた。ナチラル・ローソンを曲がって・・・という携帯メールをもらって、その指示通りに歩きつつも、軽く迷子になって、私はそのお店に到着した。ガラス張りの店内には、某氏がすでに着席して、軽く会釈をしつつ、入店・・・。

 ここは看板もなければ、店名を知らせる何かがあるわけでもなく、レストランというよりも何かのアトリエか会議室で、今日は特に何も展示していませんよ、的な凄く不思議な空間だった。長いカウンター越しに職人さんが二人、包丁を握っていて、やけに広いテーブル席には、まだ誰もいなかった。

 すぐにもう一人の某氏も加わって、遅い夕食が始まった・・・。ガラス張りのアトリエ調の会議室のカウンターで食べる日本料理。極めて不思議な空間に、どぎまぎしつつ、日本酒の三種類お試しセットで気に入った右側のお酒を頼んでは、お任せの日本料理に舌鼓。うーん。とてもおいしい。特に魚は絶品で、イカの昆布締めの熟成度合いは、過去最高レベルに匹敵。「四日前に仕込んで、昆布で・・・(後略)」と笑顔で答える職人さんの自信に満ちた瞳で、もう一杯お酒が飲めたりしつつ、素敵な受け答えも食事に花を添えてくれた。素直においしいなあ、お酒も進むなあ、男三人祭りの酒席もいい感じだなあ・・・。でもココって、高そうだナア・・・なんてことも頭によぎりつつ、多めに現金を下ろしてきてよかったと、ひとりほっとしたりしたのだった。

 21時前に始まった酒宴・・・。入店直後はカウンターにしか人はいなかったのに、お酒も進み、ふと気がつけば、広いテーブル席もほぼ埋まり、軽く満卓状態に・・・。こんな遅い時間から・・・ひい・・・みんなギョーカイの人に見えるなあ・・・。東京って怖い街だなあ、などと考えつつ、他人の料理を除いてみれば、焼き魚が選択できる以外は、みな同じメニューだった。お任せ料理一本で勝負するお店。小粋な職人さんとの会話も弾み、とても素敵な東京の夜を実感した。

 しかし、ここは麻布十番。東海道線を利用するものにとっては、必ずしも便利とは言えず、さらに終電の時間も気にしつつ、最後のご飯を大盛りにしてもらったのに、すすっと食べ終えて、とりあえずは会計となった。男三人、いい感じに飲んで食べた。

 あれ、意外に安いかも。

 普段よりも多くお酒を飲んでしまいつつ、大枚を覚悟していただけに、一枚でいいんですかという不思議な空気に包まれ、再びハッピーモードに。そうかみんな同じ料理だから、コストが下げられるのかなあ、などという邪念も浮かびつつ、駅に戻ってタクシーを拾う。品川駅まで・・・これまたそんなに高くなかったりした。

 東京のど真ん中、アザブジュバン。敷居が高そうな街の日本料理店は、味は最高、会計は抑え目・・・空間は不思議系で、この街にすんなり似合う食空間だった。東京、畏るべし・・・。そしてあの空間は、やっぱり東京ならではと思うと、不思議な夜だったと変な意識を持つから面白かったりする。

 おいしい和食が食べたくなったら、麻布十番。耳の奥で、経験値がひとつ上がる音がこだました。


 おしまい

 
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