鈴木其一 畏るべし (2008/11/12)
 



 現在、上野の東京国立博物館平成館で開催中の「大琳派展」(音が出ます)に行って来ました。

 お目当ては、たったのひとつ。「風神・雷神図屏風」です。今回は、俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一、鈴木其一が描いた4つの「風神・雷神」を同じスペースで同時に見られるというもので、いやはや、予想通りに感動してしまいました。とくに、ダントツで俵屋宗達の作に釘付けとなり、それはもう圧巻でした。この存在感をして、国宝なんですね。

 一方で、光琳のそれが重要文化財で、宗達とは微妙に違うアングルに、なるほどと思わせるオーラがあり、両者を見比べられるところに立つと、時の経つのを忘れるほどでした。しかし酒井抱一、鈴木其一のそれぞれの作品には、それらの説明書きは見当たらず、三番煎じ、四番煎じの趣もありつつ、なんとなく、それを肌身で感じたりしました。

 日本絵画については(も)、ずぶの素人を高らかに自認しつつも、酒井抱一の作には、(宗達と光琳と、目の前で比較されているからだとは思いますが、)風神のオーラがなく、それは風神というより、今の漫画(カラーバージョン)の原点にあるような、そんな思いも感じつつ、アニメーションチックだったのが印象的でした。説明にも邪気的であるというような標記があったような・・・うろ覚えですが・・・。

 そして、鈴木其一のそれは、スケール感のある作品ではありましたが、だらんと間延びした感があり、まあ時代が移り変わっても、風神雷神は、凄いテーマなんだと思うにとどまるのでした。(本当は襖の表裏とのことで、半分のスペースになるのだろうとは思いましたが・・・)

 で、その鈴木其一ですが、風神雷神では、ぱっとしなかったものの(恐ろしく自分調べ)、宗達も光琳も影を潜めるほどのすばらしい作品を残してくれていました。「秋草・月に波図屏風」です。この絵だけ、別個の展示スペースが設けられていて、照明に工夫がされていました。時間と共に背後からの照明に強弱がつけられていて、光の強さによって、絵に文様が浮かび上がるという凄い仕掛けしてあるのです。(よって写真ではその真意は伝わらないため、ここでは割愛しています)

 ううう。それはあたかも、龍安寺石庭に一日ずっと座っていたかのような、そんな光の移り変わりでした。これは凄い。光が当たると、漣のような文様が現れ、光が弱まると、それも静かに消えていく・・・。一枚の絵が背後の光を意識して・・・。鳥肌も立ちつつ、風神雷神で駄目出しをしていた鈴木其一の実力に、言葉を失っては、しばしその絵の前に呆然としてしまいました。できることなら、自然光の移ろいにて、この絵と対峙したい。そう願いつつ、それが叶わぬことを知っているものとして、その思いは空想の世界を駆け巡るのでした。

 日の光または月の明かりを背後に擁する「秋草・月に波図屏風」 これをおそるべからずして、なんとしよう。風神・雷神をも圧倒してしまったこの小さな作品を見に行くために、上野にもう一度足を伸ばそうと思う秋の夕暮れなのでした。といっても今度の日曜まで・・・急がなきゃ(爆)


おしまい

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