にっぽんハッピーワイン


 うれしかったこと 2

 
毎度おなじみの神奈川県平塚市某所のブラッスリーでのひとコマ。

 ここは日本のワインが日常的に飲まれるお店として知られるようになったが、先日もすばらしい光景を目にしたので、そのときの模様などをひとつ、ふたつ、みっつ(またはひとつ)。私はいつものメンバーとともにお店奥の1番テーブルに座って、めまぐるしく変わる会話に合わせて日本のワイン(バイオダイナミックス農法で栽培され、天然酵母での発酵、酸化防止剤の未使用で知られる金井醸造場の万力(シャルドネ)2004とシャトー・キャネイのマスカット・ベリー・A・・・両方とも金井一郎氏の直筆サイン入りボトル)を楽しんでいたのだが、ふと会話の切れ目にテラス横の13番テーブルに目をやると、20代と思しきカップルがイケダワイナリーのセレクト赤を楽しんでいた。ボトルは私のほうからは後ろ向きに(そのカップルにとってはもちろん正面)置かれていたのだが、そのキャップシールの色合いとボトルの形状からすぐにその銘柄を察知できてしまうところに、不思議な親近感を覚えつつ、私が注目したのは、瓶ではなく、隣のデカンタのほうだった。

 イケダワイナリーのセレクトがデカンタージュされて、今まさに飲み干されようとしていた。

 おおお。普通、日本のワインをデカンタしようという発想はなかなか生まれにくいが、さすがはこの数ヶ月で数十本も抜栓しているオーナーだけに、このワインの飲み方を熟知し、最もおいしい状態にして、お客様にサービスしているではないか。これは、ワインの特徴を知っているからこそできるサービスであり、これぞ生きた情報をお客様に正確に伝達しようとしている表れだと思われた。

 凄いと思った。

 プロの仕事だと思った。そのカップルがどういう風に楽しんだのかは全くもって不明ながら、彼らのグラスが空になっているところから推測するに、相当の満足感を持っているに違いなかった。

 「ワインはワインを知っている人と飲むと、より楽しくなる」

 レストランでワインを飲むということは、そういうことなのだろう。例え当事者同士ではワインの知識をほとんどもっていなくとも、そのお店に行けばワインのプロがいてくれる。そのカップルもお店に入るまでは日本のワインを飲むことになるとは思いも寄らなかったであろうし、日本のワインの知識もほとんどなかったはずだろう。ましてや日本のワインがこんなにおいしくなっていることも・・・。しかし、彼らは出会ってしまったのだ。オーナーがお勧めの日本ワインをセレクトし、おいしい飲み方を提案し、それに合わせて料理を出してくれる。お客として、そんな提案に気軽に従ってみれば、思いも寄らぬ新たなる出会いに遭遇し、きっと食事もおいしくなるのだろう。それこそ、ハッピー・レストランの誕生の瞬間かもしれない。


 ワインのプロがいるお店(注)で飲むワイン。そんなワインがおいしくないはずはなく、そのレベルに耐えうる日本のワインが出現していることに、素直な喜びを覚え、その最前線に立ち会えていることに、不思議な出会いを感じるのだった。日本のワインをその必要性を熟知しつつデカンタしてサービスするお店が、日本にある。これはとても重要な事実であると思うのは、私だけではないはずだ。いよいよ日本のワインとそれを取り巻く環境が面白くなってきているぞ !!!


つづく

(注) 資格の有無や雑誌などで得た知識の自慢などとは無縁の、おいしいワインを知りおいしいワインの飲み方を知っているという意味。意外にそんなお店が少ないところに、むにゃむにゃむにゃだったりもする。


2005/06/01




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