日 時 2007年09月08日(土) 時 間 18h00より21h00まで 場 所 Cou Cou C'est Nousさん (クークーセヌー)さん 東京都渋谷区桜丘町14−6 黒松ビル1F TEL&FAX 03−3463−9926 http://www.coucou-french.com/ 会 費 19,000円(食事・税・サ等込み) 人 数 11名様 食 事 フレンチのコース料理(前菜・魚・メイン・デザート・コーヒー) 主 旨 ビゾーの2005全部 グラス ロブマイヤー・バレリーナ・グラスVを使用 ワインリスト 2005 アルザス サヴール・プランタニエール ビネール 2005 ブルゴーニュ ブラン ヴィオレット ドメーヌ・イヴ・ビゾー 2005 ブルゴーニュ ドメーヌ・イヴ・ビゾー 2005 ヴォーヌ・ロマネ ドメーヌ・イヴ・ビゾー 2005 ヴォーヌ・ロマネ VV ドメーヌ・イヴ・ビゾー 2005 ヴォーヌ・ロマネ レ・ジャシェ ドメーヌ・イヴ・ビゾー 2005 ヴォーヌ・ロマネ レ・レア ドメーヌ・イヴ・ビゾー 2005 ヴォーヌ・ロマネ1級 (特級の格下) ドメーヌ・イヴ・ビゾー 2005 特級エシェゾー ドメーヌ・イヴ・ビゾー さて、ビゾーの感想をひとつ。 ビゾーの2005年は樽から試飲したときにも感じたことですが、あらためて都内で開栓しつつ、極めて品質の高いワインだと思います。ビゾー節と比ゆできる湿ったおが屑香は、ビゾーの蔵を訪ねたときに感じる香に似て、どことなく幼いころのカブトムシの籠の臭いを思い出させ、それは必然的に心が穏やかになります。充実した果実味とそれに重なるバニリンの甘いニュアンス。程よい酸味と、幾分乾いたタンニンに、熟成後の艶やかな姿を想像し、遅れて戻ってくるうまみ成分に頬を緩ませ、このエレガントな余韻に、さすがビゾーと思わざるを得なかったりします。まだ若いという指摘はご尤もながら、今飲んでもそのすばらしさを大いに堪能することが出来たりします。 しかし、いかんせん高い。 過去の価格(といっても昨年までのですが・・・)を知るものにとって、都内有名百貨店の販売価格、たとえばブルゴーニュの白が11000円強、村名畑指定で17,000円強、特級で33,000円強という価格には、ため息しかこぼれてきません。過去の価格の倍という感じです。果たして、2005年のビゾーにその価格に見合った価値はあるのか・・・。その答えには、おのずと否定的にならざるを得えません。需要と供給のバランスを著しく欠き、ユーロ高と、ロマネ・コンティの強烈な価格に引きずられる様にして、ビゾーのワインは、高すぎると思わざるを得ないのです。ただし、これはビゾー本人やインポータ、酒販店の責めというよりは、ブルゴーニュの取引価格の世界的な傾向という側面のほうが強大なので、購入を前提とする以上は、甘んじて受けなければならない現実なのかもしれません。ブルゴーニュは、今後、飲み物としての価格を大きく超えることになる。ビゾーは、その前兆に過ぎないのかも知れず、10年後には、あのころは安かったと、感慨にふけることもあながち否定できなかったりもします。 ところで、日本ではどこかの雑誌の影響を受けてか、この高価格にしても、ビゾーの入手は困難となっています。高くても速攻で、売れてしまうのです。グレートビンテージの評判の高さなど、その原因はいろいろありますが、なんと行ってもその生産量の少なさに起因しています。全部あわせて8キュベで7,657リットルあまり・・・。ワイナリー経営的にもこれは、少ないですね。
今回は8種類をロブマイヤーで確認したのですが、興味深い点をいくつかピックアップしてみます。飲み方は、数日前に預かってもらっていた10℃のセラーから出して、室温に馴染ませ、サービスの数分前にデカンタージュをして、ロブマイヤー・グラスVへ11等分という段取りでした。ちなみに私はINAOグラスでテイスティングに徹していました。(以下はそのコメントです・・・ロブマイヤーは時々に香を楽しませてもらうにとどまりました・・・) まずはACヴォーヌ・ロマネに植わるシャルドネから。このワインは、瓶内一次発酵が止まっておらず、シャンパーニュをデカンタしたかのごとく、デカンタ内で泡だらけとなってしまいました。酒税法的にも、またクリスピーな食感的にも、賛否を分けそうな泡立ちは、最近自然派に少しばかり距離をおくものにとって、微妙な泡立ちとなりました。樽香とミネラルが複雑に混ざり合いつつ、バッセン後しばらくしてから、その豊かな味わいを表現してきます。亜硫酸の代わりに二酸化炭素・・・。ナッチーで、目を瞑れば赤ワインのごとく味わいに、ビオレットの存在感を確認します。 ブルゴーニュルージュは、このAOCを超えるものではなく、ビゾーの片鱗を見せつつも、そのゆるさ加減がブルゴーニュたるゆえんかも。後の村名クラスとは格段の違いに、AOCの精度を知る思いです。 村名とVVは樹齢の違いがここまであるかのごとくで、VVの格上の味わいが印象的。ビゾーをどれか一本だけ買うとしたら、VVという意見も多数聞かれました。ジャシェとレアは、テロワールの違いに迫りつつ、数分前のデカンタージュではその本領を表現しきれていなかったかもしれません。比較してこそわかる二つの違いに、知的好奇心はくすぐられつつも、果たして両者の違いがテロワールの違いなのか、樽の影響によるものなのか、機会があればもう一度じっくり検証してみたいと思ったりします。単独でどちらかを楽しめば、ビゾー節の前にその個性は没してしまうかもしれません・・・。 そしてメインのエシェゾーの区画の違い。方や一級に格下げされたバージョン(シャルドネ近くの小区画)と、エシェゾーを守ったバージョン(ミュジニの近く)。両者は昔から差別化され、それがビゾーの哲学に連動しているものと察します。一級と特級は、かくも差があるのか。過去のビンテージでもその差は認識されていましたが、2005年に関しては、両者には、極めて大きな隔たりがあるように思えました。今までは1級のコストパフォーマンスの高さに、「一級こそ買い」と信じていましたが、その座は村名VVのほうへ譲りつつ、少しばかり残念な味わいだったかもしれません。しかし一方ではエシェゾーが特級であることの意味合いも感じることができました。一部の雑誌で高得点を獲得したらしいエシェゾーですが、たしかにすばらしいワインには違いありませんが、高得点を翳すようなワインでは決してなく、無駄に煽られた悲哀に、ただ嘆くばかりです。しみじみおいしいワインに点数なんていらないと、強く信じます。オリエンタリックで官能的な、そして滋味な味わいのエシェゾーに、特級の余裕を見つけたりもします。 こうして8種類のワインを飲み比べれば、一貫したビゾー・ワールドが見えてきます。新樽香に、やさしい果実味が重なり、程よい酸味とやや乾き気味のタンニンが、カブトムシの住処を連想させつつ、オリエンタリックな美しいワインかと思います。うまいが、高い。レストランで食事とともに楽しむには、価格のバランスが難しく、今回のように水平あるいは垂直にずらりと並べて、楽しむワインという位置づけがよさそうな、そんなビゾーの2005年でした。 ところで、駆けつけ一杯目のビネールの白ワイン・・・。これが一番うまかったという感想も聞こえつつ、ビゾーの夜は終わったのでした。 以上 |