シャトー・ド・ボーカステル
試飲日 2002年04月11日 
場 所    ドメーヌ内カーブとサロン
照 明 不明
種 類 フランス ローヌ地方AOCワイン
生産者 Chateau de BEAUCASTEL (Chateaunef-du-Pape)
Vintage いろいろ
テーマ シャトーヌフ・デュ・パプの王者はダントツの実力を持っていた
ワイン Chateaunef-du-Pape など
<シャトー・ド・ボーカステル>
ペラン社長とシャトー 壮大なカーブ内部 ヌフパプの白
 ローヌに疎い私でもシャトー・ド・ボーカステルは知っている。ドリンキングレポートには登場していないが、数本堪能させて頂いており、その実力は知っているつもりでいた。しかし、実際にシャトーを訪問し、現場の責任者のマイク・ライクン氏に話を聞き、セラー内で10数本のワインを堪能するとその実力は予想をはるかに越えたものだった。凄いのひとことで片付けるには言葉が足りない。もっと多くの言葉を費やしてこのドメーヌの勇姿を伝いたいではないか。とはいってもあまりにも有名なのであえて私が特筆することも無かったりするが・・・。試飲の後にペラン社長へのインタビューも成功し、ローヌ最大の収穫となったりした。また、もう一方の勇者シャトー・レイヤスとの比較も楽しく、ローヌの興味も募るばかりだ。

 試飲は葡萄品種ごとの味わいの差を知るところから始まった。さすがボーカステルである。シャートヌフ・デュ・パプで栽培が認められている13種(グルナッシュブランのクローンを入れると14種)全てを栽培している実力を垣間見る。ここでは紙面の関係等によりボトリングされたラスト5本を紹介したい。


<2000 Côte du Rhône>
 ACコートデュローヌ 
 6週間前にボトリング。グルナッシュ主体にシラー・サンソ・ムールベードルのセパージュ。シャンピニョン(キノコ)と動物香が程よく混ざり合いワインに勢いが感じられる。赤系と黒系の果実があまくブレンドされた果実味が心地よい。とろみ感もあり飲み応えもいい感じであるが、気持ち小さくまとまりすぎているかなと思わなくもない。英語を流暢に話し、時折日本語も交えてくれるマイクさんによると10年後に楽しんでくれとのことだった。
 パーカーズポイント : 90-92 (キュベ違いの可能性あり)


<1998 Chateaunef-du-Pape>
 ACシャトーヌフ・デュ・パプ 赤 
 グルナッシュ主体とのこと。フルーティな果実の甘味が特徴。スパイシーさが果実の丸みに隠れてはいるが、しっかりとしたタンニンと共にワインの下支えをしていて、まとまり感がある。まだ閉じ気味の味わいにしてこれから花開く予感を飲み手に伝えてくるところが憎い。


<1996 Chateaunef-du-Pape>
 ACシャトーヌフ・デュ・パプ 赤
 ムーベルドールが98よりも多くブレンドされているとのこと。果実味主体の98とは趣を変えてスパイシーな味わいになっている。ジビエに合わせたらうまそうな動物香が漂いシャンピニョンの香りがふくよかだ。味わいはしっかりとした果実味に力強さが加わり、存在感のある飲み応えである。旨み成分もタンとありどこまでも続く余韻がうれしさを助長している。私のメモには二重丸を通り越して、花びらが添えられていたりする。


<1986 Chateaunef-du-Pape>
 ACシャトーヌフ・デュ・パプ 赤
 シャトーから一歩も出ずに完璧に熟成されたシャトーヌフ・デュ・パプである。スモーキーな燻し香が鼻空をくすぐり、なめし皮、シャンピニョン、胡椒が見事に枯れ始めたなんだか凄い存在感である。肩の力を抜いて、豊かな果実味が熟し、そして枯れていく感覚。旨み成分の塊となったヌフパプは、熟成の最後に飲み手の溜息としてフィニッシュを飾る。脱帽してひざまづきたくなる味わいである。優雅なひととき。まだまだ数年は楽しめそうだが、この瞬間に出会えた奇跡に拍手喝采である。


<1990 Chateaunef-du-Pape>
 
ACシャトーヌフ・デュ・パプ 白
 試飲のラストを飾るのは90年の白で品種はグルナッシュ・ブランがメインとのこと。一瞬ソーテルヌかと思わんばかりの香りが漂い、こなれた感じの蜂蜜香が心地よい。パイナップルやジンジャー(生姜)の香りもゆらゆらと。リッチなとろみ感。ミネラルなしっかりと辛口に仕上げられた味わいが白ワインの熟成のひとつの頂点を見せつけている。辛口なのに甘味もそこかしこに感じられ、コルクに付着した酒石酸が暗いカーブの明りに反射してきらきら輝いていた。王者のワインに感服する次第だが、若干酸が弱いかなと思わないでもないので、今がベストな飲みごこちなのかもしれない。


<まとめ>
 シャトー・ド・ボーカステルは南ローヌで圧倒的な存在感を示している。豊富な資金と高い技術力を持っていて、個人経営的な造り手では到底太刀打ちできない。しかしここも家族経営だったりするからややこしい。高品質のシャトーヌフパプはもちろんのこと、ビオディナミ農法などでもその名声は世界の知るところであり、地元ヌフパプでも絶大な影響力があるという。シャトーの周りは一面ラベンダーがムラサキの絨毯を造りだしとてもきれいな光景だった。地元大学で醸造学を専攻する女性の横顔を眺めながら、ワインに集中する瞬間もまた楽しからずやである。


以上
 


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