クロ・ド・ラ・ロッシュ大会
試飲日 2000年7月30日
場 所    神奈川県内JR沿線某所
照 明 自然光(室内)
種 類 フランス モレサンドニ村特級赤ワイン
生産者 レシノー ポンソ ルソー
Vintage 1995 et 1997
テーマ 極上クロ・ド・ラ・ロッシュを飲み比べる 。
ワイン
Clos de la Roche 1997 Domaine LECHENEAUT
Clos de la Roche VV 1995 Domaine PONSOT
Clos de la Roche 1995 Domaine Armand Rousseau


 モレサンドニ村には5つの特級畑があるが、そのうち有力ドメーヌがひしめき合う クロ・ド・ラ・ロッシュの飲み比べを体験した。特に上記3ドメーヌはブルゴーニュを代表する 造り手であり、この経験は大変有意義であり、各方面に感謝したい。

 わずか16.9haのクロ・ド・ラ・ロッシュであるが、ドメーヌの違いが顕著に現れ ブルゴーニュの魅力をここでも痛感せざるを得なかった。痛感というと字面は痛そうだが、 快楽あるいは官能の世界だった。残念ながらレシノーだけビンテージが違うが、そんなことは 些細なことで、本当はちっとも残念なことではない。同一ビンテージでの試飲は、 贅沢極まりない。100万年早い。けだし一本だけでも幸運だからである。2年若い分は、 その2年を自分なりに補えば事足りる。または諸先輩方のご意見に耳を傾け、自分なりに 消化すればよいはずだ。

 レシノーの頂点に数えられるクロ・ド・ラ・ロッシュはこれぞレシノーであった。 上品な中にも力強さを兼ね備え、時間の経過と共にうまみ成分が増していく。 レシノーが作り出すワインに共通する上品さを洗練させた味わい。黒系と赤系がうまく溶け合い、 色合いは太陽光線を静かに吸収し、テーブルクロスに鮮やかな赤を反射させていた。

 ニュイサンジョルジュで逸品を作り出すだけあって、このワインにも若干の土壌香を 感じさせるが、若干の御香も感じられる。その印象はいわば静かなる特級。レシノー好きには たまらない味だ。このワインに不満はない。ただし唯一あるとすれば、本数が 少なすぎることぐらいだ。次にあえたら幸福だ。

 ポンソはうって変わって躍動感満ち溢れていた。レシノーでは感じなかった動物香のためか、 空想動物が鼻空を楽しそうに駆け回っていた。動物香のあとには甘味成分が充満し、 アルコール以上に酔わせてくれる。ポンソは当たり外れが大きいで有名だが、これはまさしく 大当たり。色合いはレシノーより濃い感じ? ん。どっちだっけかな。このコーナーが テイスティングではなく、ドリンキングであるために心地よい酔いが私を襲ってしまった。 ぬめっとした感覚は隣村のシャンベルタンにはないものだ。官能的の意味が肌でわかるような 気持ち。大変おいしゅうございます。

 ところでポンソはなぜのワインにVVつまり古木をエチケットに謳うのか。特級は普通 みんなVielles Vignesのはずなのに。おそらくクロ・ド・ラ・ロッシュ自体がその味に 反比例するかのように大変地味であり、モレサンドニとの違いが不明な海外消費者のために 敢えてVVを名乗らせたのだろう。ACブルゴーニュにも葡萄品種が書いてあるものが多いが、 同じ理由からだろう。消費者を意識しているためだろう。商売ってやつかな。

 ルソーのクロ・ド・ラ・ロッシュはうまみ成分が満ち溢れ、もうテイスティングの域を越え、 夢心地の世界に誘ってしまった。残念でもあり、快楽でもあった。特級畑に共通の余韻の長さと、 時間と共に深くなる味わいは、ブルゴーニュの最高峰に堂々と君臨している。華やかだけでも、 強いだけでも、その極みには達しない。

 今回の3本のワインは全く別々の風味と味を醸し出してはいたが、根底に流れる精神は 共通していた。その精神とはクロ・ド・ラ・ロッシュのテロワールである。この畑の持ち味を 三者がそれぞれの立場で、それぞれの味を表現したのだろう。そしてそのどれもが、飲み手を 刺激し、最高の味わいを提供してくれている。

 極上のワインは喉で楽しみたい。

 喉で味わってしまったから、なんだか整理できないでいる。

以上


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