アントナン・ロデ | ||||||||||||||||||||||
試飲日 2000年7月29日 | ||||||||||||||||||||||
ドメーヌ・アントナン・ロデのシャルム・シャンベルタンは強烈だ。これほど難しい シャルム・シャンベルタンは初めてだ。まずその色。ローヌの赤を思わせるような濃い黒系の紫。 光を通さない程のこの濃さはブルゴーニュでは珍しい。従来のこの畑の印象は、 やさしく万人受けするタイプというものだったが、そんな薄っぺらな思い込みはあっという間に 消し去られてしまった。ジュブレシャンベルタンの特級のなかでは比較的飲みやすいワインという 又聞の知識は、音をたてて崩れていった。 しかしこの色合いをもってして、ブラインドテイスティングで正解を出すのは 困難極まりないだろう。ピノ・ノワールとはつくづく信じがたい。シラーの亜種といわれれば、 そう思い込みたくなる色だった。 そしてこの濃さゆえか、味わいも閉ざしていた。おそらく20余年の瓶熟を待ってこそ、 その本質を表現するのだろう。堅すぎて、うまみ成分が見当たらなかった。 このワインをどう表現しよう。同席の先輩方の表情もいまひとつ冴えない。 これはシャルムではない。少なくとも私を魅了してきた、たとえばアンリ・ぺロ・ミノや デュジャークの93年の、あのやさしさの奥に秘められた力強さを持ち合わせた偉大な シャルムとはかけ離れた存在だった。 またまた悪い癖が出た。ビンテージ違いで、しかもここにないワインとの比較は意味が ないのだ。このワインに集中しよう。 かなり大きいブルゴーニュ系グラスにゆっくりと注いで、待つこと2時間。ようやく 20年後にあるべき姿が垣間見られた。極上のピノ・ノワールである。美味くなってきた。いや、 これは美味い。美味いじゃないか。 この深い味わいは、相当ワインに熟知していないと体験できない。このワインは難しい。 初心者には、おいそれとは近づけない壁がある。何がそこまで、このワインを閉ざさせるのか。 同じ葡萄品種、同じテロワールにして、この違いはなんなのか。説明が出来ない。 それが証拠に同時に、同じグラスにドボドボと注いだほうは、酸が立ちすぎ、とても同じ ワインとは思えないほどの味になってしまっていた。味の伸び具合も物足りない。 いつものINAOグラスでも、考えうる方法で試してみたが、結局その実力は 開花させられなかった。グラスの差が味わいに差をつけた。それはつまりワインを おいしくいただくための飲み手の差でもある。感動は認識あってこそである。 このワインの評価は高い。平均で96-98点。この年の全ブルゴーニュ産のワインにおいて トップグループにある。93年のクロード・デュガのグリオット・シャンベルタンに匹敵するとの 情報もあるが、その比較対象のワインを知らない者としては紙上の知識の域を出ない。 いつか是非そちらも飲んでみたいものだ。 ところでアントナン・ロデは97年の5月、所有者が変わった。複合企業Wormsグループに 買収されたのだ。しかし醸造は変わらない。醸造担当のマダム・グブラン (Madame Nadine Goublin)は、ルイ・ジャド社のJacques Lardiere同様ブルゴーニュ愛好家を 心地よく酔わせてくれる。 ロデはネゴシアンとしても有力で、本拠地のコートシャロネーズ メルキュレでは 一目も二目も置かれているという。本来ドメーヌの本拠地とかけ離れた畑では極上のワインは 造られづらいが、このシャルムはそんな常識にも風穴を空けている。またロデはリシュブールも 造っている。いつかは飲んでみたいものだ。 また、ロデはムルソーのドメーヌ・ジャーク・プリュール(Jacques Prieur)の販売代理権も 持ち(1989年)、その醸造には前述のマダム・グブランが大きく関わっている。そこは赤白を 問わずブルゴーニュの名醸の宝庫だ。 白の名醸 モンラッシェ・コルトンシャルルマーニュ・ムルソーぺリエールなど多数 赤の名醸 シャンベルタン・クロドヴージョ・エシェゾーなど多数 <まとめ> 今回ロデの名醸を楽しめたことで、プリュールの名だたる名醸にも新たな興味が 湧き出てくる。しかし、ここは本拠地のメルキュレのお買い得ワインを飲んでみたい。 シャトー・ド・リュイ(Rully)やシャトー・ド・シャミュレ(Chamirey Mercurey)を 探してみたいものだ。メルキュレの26.7ha畑からはでは年産12万本も造っているようなので、 いつか出会えるだろう。 またアルファベ順のドメーヌ案内では、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティのひとつか 二つ手前で紹介されているので、非常検索しやすいことも付け加えておこう。 以上 |