ジャン・ガローデ
試飲日 2000年7月9日
場 所    神奈川県内JR沿線某所
照 明 蛍光灯
種 類 フランス ブルゴーニュ産AOC赤ワイン
生産者 Domaine Jean Garaudet  (Pommard)
Vintage 1998
テーマ ポマールの名手が造る貴重な名品。
ワイン Pommard 1er Cru Les Charmots


 ジャン・ガローデはポマールの名手である。コント・アルマン(Comte Armand)とアルマン・ジラルダン(Armand Girardin)と共にポマール3大ドメーヌのひとりである。

 ジャン・ガローデのワインはブルゴーニュの入門編として最適である。お手ごろな価格により、比較的手に入れやすく(量は少ないので、本気で探す気があればの話だが)、しかもブルゴーニュの品のよさを兼ね備えたワインだからである。ボルドー好きがブルゴーニュの魅惑の世界に転向するのは、ジャン・ガローデの名品からかもしれない。モンテリーやポマール・ノワゾンを飲めばその赤みのある色彩と味の上品さに舌を丸めることだろう。

 このシャルモはポマールの名品に数えられる。ロバート・パーカーJrも著書で絶賛しているほどだ。彼の評価を自分の舌で判断できるのもワイン好きには堪らない。

 なによりも生産量が極端に少ないため、今回の試飲は幸運であった。このシャルもは、100年近く前に植えられた葡萄から、僅かばかり造られる。当初今回の試飲リストには入っていなかったが、飛び入りの某氏のおかげで、主催者のご配慮により急遽加えられたのだ。 各方面に感謝したい。

 味は微妙だった。中華系スパイスが効いたという表現が最適と思われるが、もっと下衆な言いまわしでは、茹でたソーセージの皮の香と言いたくもなる。上品さと野暮ったさの中間に位置し、どちらかといえば、上品な味わいだと感じた瞬間、このフィネスはめきめき頭角をあらわした。この微妙な印象を楽しむことができるワインは、そんなに多くないだろう。

 上品なワインはつくづく上品であり、野暮なワインはいうもがなであるからだ。

 このワインは料理に合わせやすそうだ。ワイン自体がこれでもかと表現するのではなく、ひっそりと、それでいてしっかりと食卓を彩ってくれる色合いと味を持つ。ブルゴーニュらしい赤は、新鮮な赤系のなかにも若干の黒系が混ざり合い、ボルドーのとおり一辺倒の紫がかった赤とは対照的である。  

 ところでジャン・ガローデといえば前述のポマール・ノワゾンとモンテリーだ。 97年・98年と二年続けて試飲したが、その端正な味わいは、定番の落ち着きを見せている。やはりこれらのワインを飲むと安心できる。決して外さない。5,000円前後の金額を一本のワインにつぎ込むことができるとしたら、間違いなくジャンガローデを奨めたくなる。ジュブレシャンベルタン系の目に見えるような力強さや、ほこりっぽさは持ち合わせていないが、しっぽり決めたい夜には最高のワインだ。

 強いだけがいいワインではない、ということをその味をして知らしめてくれる。 何も考えずにひたすらにおいしいワインだからである。

 ワインを話題の中心に盛ってきても、食卓が彩られるし、料理をメインにした会話にも必ず横にいてくれる味。雑多な話題にもジャン・ガローデは十分に対応してくれる。会話の隙間にこのワインで頬を染めることができたなら、きっとその食卓は幸せだ。

 ジャン・ガローデの赤をしみじみ堪能できれば、ブルゴーニュの奥深さに片足を突っ込んだことになる。それはおそらく悦びのプレリュードだから、なのだろう。

以上


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