ラマルシュ
試飲日 2000年8月19日など
場 所    神奈川県内某所        
照 明 白熱灯
種 類 フランス ブルゴーニュ産AOCワイン
生産者 Domaine Francois Lamarche (Vosne-Romanee)
Vintage 1997
テーマ ヴォーヌ・ロマネ特級ワインを。
ワイン La Grande Rue


 ブルゴーニュを飲み始めた頃からの願い。それはヴォーヌ・ロマネ村の全ての特級畑(グラン・クリュ)を味わうこと。その着実なる一歩としてドメーヌ・ラマルシュ単独所有のラ・グランド・リュを楽しむことが出来た。このワインは特級の中でも流通の問題からか、そもそもの少なさからか、日本で見かけることは少ない。貧乏ではあったが、このチャンスを逃すのは忍びない。両隣に比べ格段に安い価格設定もうれしいが、飲めば納得という説もある。

 このラ・グランド・リュは1992年8月に一級から特級に昇格した。ブルゴーニュでの特級への昇格は1981年のクロ・デ・ランブレ(モレ・サン・ドニ村)についで二番目である。(もし次に昇格されるとしたら、シャンボール・ミュジニー村のレ・ザムルーズだろう。)

 この畑が1936年に一級に指定され、その後昇格した逸話はブルゴーニュ関係の書籍に詳しいので、ここでは触れないが、その昇格の最大の理由はその畑の位置にあることは言うまでもない。ちなみに、その畑の位置は瓶の裏にも記載がある。

 かのロマネ・コンティとあのラ・ターシュに囲まれた極上の立地条件だ。私もかつて地球上もっとも高価なワインを産出する丘を歩いたことがあるが、そこでの深呼吸を思い浮かべるとき、どうしても笑みがこぼれてしまう。

 偶然にも今回のビンテージは1997年。私が歓喜に包まれる直前に摘み取られた、最も親しみを覚える年のワインなのだ。味わう前提条件にいろんな要因を踏まえての今回の試飲ではあった。 


さて味について
 このものすごいアロマは強烈だ。甘い香を基本としながら、鼻空を充満させるのは、赤ちゃんパウダーの、あの粉っぽい香。お風呂上りに母にパタパタと首筋をたたかれたあの感じだ。コシュデュリーの赤を吹き飛ばすほどのアロマだった。
 色調は透明感があるルビー色。赤系に若干の黒系が程好く入り込み、透明感にしっぽり感を加えている。ヴォーヌ・ロマネらしい薄いがしっかりとした色合いである。
 味は辛口。

 んん。ただ、アロマの強烈さに比べ味わいに奥深さがない。アロマも時間とともに静かになり、なんとなく平べったい感じがこびりついている。
 直前のコシュデュリーのオーセイデュレスと同じ路線のワインではあるが、少し物足りない。コシュデュリーのしみじみさが思い出され、影が薄くなっている。
 意外である。隣接するラ・ロマネの強くて濃くって黒系のワインとはかけ離れた味だ。決してまずくはないが、どうもいまひとつ惹きつけられない。

 おそらくこのワインを味わうための技量が足りなかったのだろう。ワインの上品な飲み手は、本来の持ち味を十二分に引き出すことができる。その場の状況に応じて、飲み方を代えられるからこそ、そのワインのおいしさを堪能できるのだ。
 ブルゴーニュは同時に注いだ隣のグラスとでさえ味わいを変えることがある。グラスの中での育て方の差が味を変えることは少なくない。その差は飲み手の技量に負うところも多いのだ。

 しかし、私はまだ若僧である。
 このワインに対する愛も知識も足りなかった。ただただ不明を恥じるのみだ。ワインの名前につられて準備が足りなかった。

 今回の経験を次回のチャンスにつなげたい。この先ワインを求めつづけていれば、もう一度位巡り合えるだろう。来るべきその日には是非とも堪能したいものだ。

 しかし自虐も面白くない。少し自己弁護してみよう。
 この畑の葡萄は大部分が最近のもので、古木は少ないようだ。パーカーによれば1982年に改植されている。古木が当たり前の特級にしては異色である。だから何といわれると辛い。パーカーのバイヤーズガイド5版にはその記載はない。マット・クレイマーも両隣と同格とはいえないと評しているし、相当のばらつきがあることも伝えている。

以上


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