グラムノン
試飲日 2000年8月19日
場 所    神奈川県内某所
照 明 白熱灯
種 類 フランス コートデュローヌ産AOCワイン
生産者 Domaine Gramenon (Côtes-du-Rhône)
Vintage 1999
テーマ グラムノンのヴィオニエに癒される。
ワイン Côtes-du-Rhône Cepage Viognier


 ドメーヌ・グラムノンはコート・デュ・ローヌでトップ評価の造り手である。
 その特徴は印象深く、ブルゴーニュには持ち合わせない別個の存在として大いに気になる。従来はこのAC屈指の赤を堪能させてもらってきたが、今回はヴィオニエ主体の白ワインを試飲した。この白も印象深いワインとなった。

 ヴィオニエは葡萄の品種の中でも高貴種に数えられる。その根拠はやはり独特のこの香だろう。スイセンやアンズのアロマがグラス一杯に溢れ出す、個性の強いワインである。 その強烈な香ゆえに料理には合わせ辛いが、このアロマを楽しみたくなる夜もある。

 ティスティング温度で一口目を飲んだが、香は閉じていた。味も閉じていて、飲まれることを拒んでいるかの印象を受けた。瓶を氷水に浸してしばし待とう。

 このヴィオニエは北ローヌのシャトー・グリエとコンドリューの品種として知名度が高い。知名度が高い分、格上のワインは、やはり高い。ネイレ・ガシェ家の単独所有のシャトー・グリエにしろ、ギガル社のコンドリュー・ラ・ドリアーニュにしろ一本一万円前後である。かなり高価である。同じ予算でコート・ド・ボーヌの極上のシャルドネが飲めるため、今ひとつ触手も引っ込みがちである。

 しかし今回のワインはその1/3の価格で楽しめる。この価格帯にしてはかなりお得なワインである。特に葡萄品種の味わいの違いに興味があるものとしては、この価格はうれしい限りだ。あまり価格を落としても、他の高貴種との比較は出来ない。しかし今回はトップ評価の造り手のワインである。これは大いに参考となるに違いない。

 そろそろワインも冷えただろう。
 夏場のため部屋の温度にも気を使い、少し冷やしたワインをINAOグラスへ。いい感じだ。これは探していた香だ。かつて大枚はたいて堪能したあの香が充満してきた。
 この香がアロマなのかブーケなのかの判断は難しい。年号も若く、両者の香はかなり重複しているのでそれを嗅ぎ分けるのは至難の業だ。残念ながら、私はその嗅覚は持ち合わせていない。しかしこのアンズとスイレンの香は十分堪能できる。

 味わいはやや弱い。この香がなければ、太陽を浴びたソービニオン・ブラン系の味わいだ。酸味に丸みはなく、オイリーさがあるためかえって飲みにくい。しかし、やや考え、トータルでは美味いと思うワインだろう。やはりこのワインは香、最重視のようだ。

 楽しいワインではある。しかしこのワインだけでは物足りない。ワインをお酒の視点で考えた場合、飲み応えにやや欠ける。個性的な香が料理との相性を遠ざけるためか、今ひとつグラスは進まない。ちょうどブルゴーニュの赤があったため酔いはこちらに任せられたが、この一本だけではアルコール飲料としては厳しいかもしれない。

 しかしである。別の赤ワインを飲み終える頃、何気なくもう一度グラスに残った香を嗅いでみた。
 ううう。まるで貴腐ワインのようだ。甘く、それでいて引き締まった香。おそろしや、である。味はぼやけてしまっていたが、その香は甘味を帯びて、なお強烈に嗅覚を刺激してくれる。この時間差での深い香は、ブルゴーニュの極上ワインが持つ特徴にも通じるだろう。たとえば硬く閉じていたコルトンシャルルマーニュが最後の最後で花開くような、そんな印象を感じさせてくれた。

 このヴィオニエの飲み方としては、最初にこのアロマを楽しみ、ある程度飲み進めたところで別の酒を味わい、グラスに残した香を食後酒として締めくくる、というのはどうだろう。ワインは時間とともに変化する。その変化を食事に合わせられれば、食後の会話も尽きることがなく、もう少しあの人と夜ふかしが出来そうである。

以上


目次へ    HOME

Copyright (C) 2000 Yuji Nishikata All Rights Reserved.