シャトー・ド・ポマール
試飲日 2000年9月15日
場 所    神奈川県内某所
照 明 蛍光灯
種 類 フランス ブルゴーニュ産AOCワイン
生産者 CHATEAU DE POMMARD (Pommard)
Vintage 1995・1990・1988
テーマ 垂直テイスティング
ワイン Pommard


 ブルゴーニュにもシャトーワインがある。このシャトー・ド・ポマールをはじめシャトー・ド・ムルソー、シャトー・ド・シャンボール・ミュジニなどが有名である。ヴォーヌ・ロマネ村の特級ラ・ロマネはシャトー・ド・ヴォーヌ・ロマネである。

 シャトー・ド・ポマールは古くからこの地にシャトーを構え、ワインを造りつづけた貴族の館であり、畑である。時代と共に所有者を代えつつも、伝統の味を守りつづけている。フランス政府機関INAO(Institut National des Appellation d'Origine)による原産地統制名称法の規制に対抗する姿勢が随所に見られる。この高価で重く頑丈な瓶しかり、エチケットに堂々と謳うシャトー・ド・ポマールの文字しかりである。INAOが独自の主義により線引きした区画に、伝統のシャトーとして一言あるかのようだ。名家の意地である。INAOの格付けは村名畑。されどシャトー・ド・ポマールはシャトー・ド・ポマールである。
 ただ最近はその知名度のため、ブランド化しているとの評もある。

 現在のシャトー・ド・ポマールを運営するのは、エチケットにその名があるようにソロボンヌ大学教授のジャン・ルイ・ラプランシュ(Jean Louis Laplanche)博士(心理学)である。畑は村名クラスにもかかわらず石垣に囲まれ、面積は20haある。新樽100%使用。またシャトーそのものはブルゴーニュの観光地として定番コースである。


<飲み方>
 今回のワインは2000年8月にシャトー蔵出し。保存状態は完璧である。
 三本とも抜栓後10分でINAOグラスへ。抜栓条件はほとんど同じ。抜栓間隔は約15分。


<味の印象>
☆1995☆ (7,500円)
 プラムとチョコレートのアロマが若さの象徴である。若干鉄臭さが感じられ、鄙びたニッキの趣もある。焦がした茶色に黒系の赤が品よく混ざり合い、上質ワイン特有の品のある色合いである。味はまだ閉じている。荒々しさも残り、他のビンテージに比べ水っぽさも否めない。しかし肉付きはよく、まだまだこれからが楽しみなワインである。熟成を待ちたい。ポマールらしい一本である。タニックで黒系果実味果実香の典型である。

☆1990☆ (9,000円)
 色合いはほとんど1995と感じだが、エッジにかすかに熟成色がある。香が閉じているためか果実香は感じられない。澄んだ木の香。味は格段にうまみがある。唾も多く出てくる。飲み応えもある。荒々しさがなく、こなれた感じ。ただ若干余韻が短いのが気にかかる。ただ、この畑が村名格付けであることを考えると、その実力は大きく上回っている。今飲んでおいしい。ベストのタイミング。

☆1988☆ (10,000円)
 もろみの香が印象に残る。肥えた香。果実香もあり、後半にはミルクカラメルもでてきた。濃縮感もあり、長期熟成タイプである。フレッシュな味わいも残しつつ、熟成の楽しみも味わえる。色合い、味わいの基調は三本とも共通しているが、この1988がトップである。この差は年号の差なのだろう。アルコールのインパクトも強く、最も酔いが回るタイプ。ただ、もろみ系の香は万人受けするか疑問も残る。しかしコート・ド・ボーヌ通には堪えられない味わいだろう。


<まとめ>
 このシャトー・ド・ポマールにはジャン・ガローデ仕立ての花のような明るい印象はこのワインにはない。地味であるが、存在感のあるワインである。
 三本に共通する味わいは、タニックで黒系の果実味。そしてグラスに注いだ瞬間は閉ざしているが、時間の経過と共に緩くなる堅さだろう。年号が若ければその緩め方ものんびりしている。徐々に甘くなる味わいは、本当にほっとする。うまみ成分もしっかり。歯茎に心地よいストレスを与える渋みもいい。強烈な奥行きこそないが、しっかりした深さがある。低温浸漬系のトレンディーなワインに比べ、大変地味な味わいであるが、これが伝統の味そのものである。そして飲み干したグラスに立ち込める甘い香は、酒席のお終りを告げる最高のエピローグである。
 この味はブルゴーニュの誰もが通る通過点かもしれない。ジュブレ・シャンベルタンの濃くって強いワインに魅了され、この村のワインにほっとして、ヴォーヌ・ロマネに行き着く。そんなワインストーリーも描けそうな感じがしないでもない。


<おまけ>
 シャトー・ド・ポマール1988は別の日にも試飲したが、当日は一緒に飲んだワインの印象に引きずられ、残念ながらいいコメントは残せなかった(いいコメントなど見たことがないという突っ込みは、結構待っていたりする)。1981年のベガ・シシリア ウニコの後ではどんなワインでもその味わいを発揮できないだろう。
 ただ、このシャトー・ド・ポマールをして「ただの赤い水」と言ってしまったために各方面にヒンシュクを買ったことだけは間違いなさそうである。この場を借りて謝罪したい。 ただあの名醸の後では例えロマネコンティでも存在感を無くすというから、まんざら見当違いでもなさそうだ。

以上


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