ポンソ
試飲日 2001年8月19日
場 所    神奈川県内某所       
照 明 蛍光灯
種 類 フランス ブルゴーニュ産AOCワイン
生産者 Domaine PONSOT (Morey-St-Denis)
Vintage 1990
テーマ ドメーヌ・ポンソ威風堂々。
ワイン CHAPELLE CHAMBERTIN
GRIOTTE CHAMBERTIN
CHAMBERTIN
 
<始めに>
 今回の超豪華スペシャルテイスティングは、日頃某所にて大変お世話になっている某氏の誕生日を記念して某氏主催により開かれたもので、某氏を始め某諸氏に感謝申し上げます。また、ポンソ三連発のオープニングを飾るにふさわしく、ヴェルジェ 1996 シャブリ・グランクリュ・ブーグロを頂いた。重い口当たりは感激に余りあるが、紙面の都合上ポンソに絞ってレポートしてみよう。ただし相当酔ってしまったため、かなりあやふやという説は否定できなかったりする


<シャペル・シャンベルタン>
 1990年というと11年も前のワインであるが、まだまだ若さを保っていて、ようやく来年あたりから熟成が始まろうとしているといった感じである。黒系果実味が強い味わいの根底にあり、全盛期のポンソの実力を垣間見せる。これがポンソのグラン・クリュなのだ。力強いのに荒々しさは感じない。丸みを帯びた力強さと表現すれば言いのだろうか。うまみ成分にうっとりしつつも、気合を感じる飲み応えに、しばらくはポンソ節に酔いしれたいところである。
 
 シャペル・シャンベルタンといえばこの村のグランクリュの中で最も軽くて優雅なワインとされているが、実際に飲んでみると「軽い」というイメージはない。確かに特級同士で比べるならば、そう言えなくもないが、この特級ワインはワイン全体の相対的な印象からすればかなり強いワインの部類に入ると思われた。

 この特級畑はドメーヌ・クレーユ・ダウが最もすばらしいとの評価を受け、ルイジャド社に買収されてもなおその名声は衰えることを知らないらしい。畑はシャンベルタン・クロ・ド・ベズとはグランクリュ街道を挟んで西側に広がり、グリヨットの北側に位置している。所有者も少なく、生産量も少ないが、今回の試飲をきっかけに少し追いかけてみたい畑と相成った。感謝である。


<グリヨット・シャンベルタン>
 シャペル・シャンベルタンで感じた力強さを、さらにパワーアップさせたような強烈なインパクト。うまい。これもとことんうまい。グリヨットもまた11年の歳月を感じさせないパワーがある。黒系果実を基調とするところはシャペルと同じであるが、味わい・香り・余韻・うまみなど確かにシャペルを上回る。乾いた土壌香に複雑なアロマが加わって、グラスに鼻を近づけるだけでも幸せであり、口に含む幸せに感謝感激である。シャペルの南側にありシャルムの北側に隣接し、同じ年のワインながら、この味わいの差は不思議であり、うれしい限りだ。


<シャンベルタン>
 威風堂々。シャンベルタングラスにはやはりシャンベルタンが良く似合う。シャンベルタンがシャンベルタンたる所以を思い知った。黒系果実味が丸みを帯びて、前二作より力強いはずなのに、なぜか柔らかみがある。シャペルの力強いをより強烈にしたのがグリヨットならば、このシャンベルタンは両者を足下に従えるほどの力強さを秘めつつ、飲み手にやさしく答えてくれる。より上品さが加わって、ほかのワインでは決して味わえないスケールの大きさを感じるのだった。すごいモンスターワインに出会ってしまった。感謝である。

 ただINAOグラスではこのやさしさを表現しきれず、グラスの中で地団駄を踏んでいるような印象を受けた。教室に押し込められた「暴れはっちゃく」的であり、INAOグラスの万能さゆえの役者不足を感じざるを得なかった。それはこのシャンベルタンが、まだまだ若若しさを持ち合わせているためである。11年目にしてまだ、飲まれたくなかったという後悔に似た印象が、後ろ髪を両手でつかんでくる。おそろく何も知らずに名声と情報だけに頼ってこのワインをあけても、後ろ髪を引っ張られるだけで、これほどの感激は得られなかっただろう。

 この感動はシャンベルタングラスと飲み頃の温度に空冷で調整された先輩方の「心」があってこそである。熟成が足りない分(10年以上も経っていながらこの言葉には違和感を覚えるが)、グラスでワインを育てるべしである。コルクは抜かれている。もう後戻りは出ない。あとはこのワインの実力を、飲み手によって引き出してやる必要がある。なぜならば、ただ飲むだけでは味わえない魅力とおいしさと官能がこのワインにはあるからだ。
 
 ワインはワインを知る人と飲むとより一層おいしくなる。この事実は世界最高峰のシャンベルタンにも当然当てはまり、ポンソの1990シャンベルタンは、その実力をいかんなく発揮させつつ、大いに楽しみたいワインなのである。すべてはおいしくあるために。
 もう一本あれば、今度は自分でこの感動を伝えられるに違いない。そんな日が待ち遠しかったりしつつ、ポンソの夜は深けていくのだった。


<まとめ>
 今回の1990水平テイスティングで発見したことは、このビンテージのポンソは絶対「買い」であり、まだまだ何十年も熟成しうる実力を持っているということだ。まだ若若しく、最近のビンテージと間違えてもやむを得ない。近年パッとしないポンソであり、ビンテージによって当たり外れが大きいドメーヌとして有名である。特に1995などは村名クラスで67?点という最低の点を取ってしまうほどである。パーカーポイントで80点未満は、確かにおいしくないと思うが、67点とはどんなワインなのか逆に興味も沸くというものだ。
 ポンソの1990を見かけたら、絶対買いたい。しかしその価格を想像すると、出会わないほうが良いかもしれないとも思ってしまったりする。
 出会えたことに感謝しつつ、今宵のレポートにも筆を置こうさ。


以上


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