コント・ラフォン 1998 | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2001年8月26日 | |||||||||||||||||||||||
<モンラッシェ> 特級畑。ラフォンの畑はシャサーニュ・モンラッシェ村にあり、特級クリオ・バタール・モンラッシェと特級バタール・モンラッシェが交差する角にある。 この薄い金色は、意表をつかれた感じである。1997が真金色だったからである。味わいにはまさに鋼のような酸を思わせるような強さがある。INAOグラスからほのかに香るのはソーセージのような動物的なアロマである。目を閉じてテイスティングしたならば、白ワインとは思えないような印象である。しかし、目の前に確固として存在するのは辛口白ワインの最高峰モンラッシェなのである。時間とともにトロピカルフルーツも加わって、ますます不思議な感覚に陥った。うまみ成分も申し分なく、口中に唾が満ち溢れ、さすがモンラシェと敬服させられ、確かにおいしいワインではある。おいしいワインには違いない。 そう、この1998年のモンラッシェは明らかに1997年とは別物なのである。1997の印象が強烈過ぎたせいか、今一つ1998は琴線には届いてこない。あの感動の再現を期待していたきらいもあるが、ややがっかりと言えなくもない。 好みの問題として語るのも一興だが、ここはやはり1997のすばらしさを堪能するほうが、自然の成り行きだろう。ドミニク・ラフォン本人が1992と並び賞するグレートビンテージと公言するだけのことはある。その1997と比べてはいけないという説を私は信じたい。 ただモンラッシェを、それもコントラフォンのそれを2ビンテージ比べられただけでも幸せであり、おそらく二度と出来ないだけに貴重な経験でもある。 モンラシェといえども、コントラフォンといえどもビンテージの影響を受けざるを得ない。それが自然の恵みを享受するワインの最大の特徴であり、単一葡萄品種(シャルドネ)からしか造らないブルゴーニュの官能の世界でもある。この違いがあるからこそ、ブルゴーニュの魅力は終らないのである。今宵も感謝のテイスティングでありました。 <参考 1997モンラッシェ> マッキンキンの金色は、かつて体験したことがない強烈な印象。トロトロの重曹感を伴い、濃くって強い、まさに強烈なワイン。別格中の別格。まさに脱帽し、跪いて飲むべし(デュマ)である。ペリエールで感じた頂点に、さらに上があったという印象。おそらくこれ以上はないだろうと実感させられる。TOP of WINE。耳の内側に残るうまみ成分は、天にも昇る気分である。うますぎる。このうまさは言葉では到底表現できない。もう言葉は要らない。共に飲む人たちの瞼にこそ、横顔にこそ、微笑にこそ、その的確な表現が見え隠れしている。世界一の共有。世界一の認識。目を閉じれば真実が見えてくる。 私の場合、目を閉じればそこは、極楽浄土の世界。一昔前のある日、車で通った岩手県宮古市、三陸海岸・浄土が浜の海岸線がフラッシュバックしてくる。さらにはへとへとになって自転車でたどり着いた、あの畑が鮮明に思い出される。 これ以上の液体が、この星には存在しないとすれば、あとはこのワインの熟成を待つしかない。10年後、20年後、30年後と移りゆく時の流れとともに、このワインがそばにあって欲しいものである。今のところ、最後の晩餐で飲みたいワインは、間違いなくコントラフォンの1997のモンラッシェをもう一度である。 以上 |